山林購入時に見落としがちなチェックポイント事例27選

「山林を買って、自分だけの秘密基地をつくってみたい!」「大自然の中、プライベートで自由に遊べる場所がほしい!」「森の中に小さな小屋を建ててみたい!」

多くの人が描く憧れかもしれません。ここ数年はアウトドアブームで、キャンプ場も予約がとれないほど賑わっている様子。

「じゃあ、自分の山を買って、プライベートキャンプ場をつくろう」そんな気持ちになる人もいるでしょう。

でもちょっと待ってください。山を買うのは一般住宅を買うのと全然違います。事前に知っておいた方がいいことがたくさんあります。

本記事は、実際に経験した事例を交えながら、「山を買うことを検討してみたいけど、いったい何から手をつけたらいいの?」というときに役立つ内容をまとめました。山林購入時の参考にしてみてください。

(※実際に開拓を始めると、「あ、あの時のことがあった」と思い出します。自分自身が大事なことを忘れないために、気づいた点、学んだことを随時加筆更新しています)

目次

そもそも「山林を買う」って?

山を買うという言葉をきいて、どんなイメージを持ちますか?

数年前に知人から「山を買わない?」と言われたときがありました。言われて想像したのはあのお山のかたち、そうひと山です。当時は、「ひと山なんて買えるの!?」と思ったのが正直なところでした。

実際は土地には地目というのがあって、山とは「山林」と呼ばれる土地のことを指します。なのでひと口に山といっても100坪前後の土地から何万坪というレベルまで多岐にわたります。

ここでは山林を購入する際のチェックポイントについて記していきます。

山林を買う心構えをもつ

まずはここからです。「えっ?心構えなんて大そうな・・・」そんなふうに思いましたよね?これは買った後のこともしっかり考えておかないと大変なことになるよという理由からきています。

具体的には、山を買って何をしたいのか?どういう姿にしていきたいのか?将来にわたってちゃんと面倒をみていけるのか?といったことです。

逆の言い方をすると、キャンプ場の予約が取れない、だからプライベートキャンプ場がほしいといった安易な考えで臨むのはおすすめしません。

それでは長続きしないし、山林との接点は環境への意識も持って取り組みたいものです。買って将来にわたりどうしたいのか?購入前にじっくり時間をかけて検討してみてください。

山や森には長い年月をかけて築かれてきた生態系のバランスがあります。人が入り、バランスが崩れるとそれまで自然に流れていたものが途絶えてしまいます。

僕自身、今でこそこんなことを言っていますが、当初はそこまで深く考えていませんでした。その後、森の開拓をやり始めて、日に日に森の恵みや自然の大きさを感じるようになりました。山を買うと、自分と自然との関係性が始まります。

安全面を最優先で考える


山林を所有すると、自分の土地にある木は自分で管理責任を持たないといけません。自分たちの身に危険を及ぼすことがないか、近隣に迷惑をかける心配はないかです。

キャンプ場で倒木がテントを直撃して死亡事故につながる痛ましい出来事がありました。これは最悪の事態ですが、倒木が隣接の家の屋根を突き破ったり、駐車場を壊してしまったり、電線を切ってしまったりはよくあるケースです。

倒木は強い雨や長雨の後に起こりやすいと言われています。枯れている木は倒れやすくなります。だから伐採します。

といえばわかったような言い方になってしまいます。でも実際は計り知れない何が起こるかわからないということです。

ちなみに僕たちも開拓中テントに直撃する被害に遭った経験があります。現場を見たときは一体何が起こっているのか理解できず呆然としてしまったのを思い出します。

山林を買うということは自然と向き合うこと。それは良いこともそうでないことも全て向き合うという意味です。これまで持っていた心構えとは一段違う姿勢をもつことが大切です。

広々としたところで自由に過ごしてみたい、森林の中で癒されてみたい・・・思いはそこにあるでしょう。もちろんそれでOKだしみんなそうです。

でもそのたのしさ、素晴らしさを満喫するために山林や自然がもつ大きな力を知ることが必須。自戒の意も込めて記します。

最後に、上記したキャンプ場倒木事故に際し、示唆のあるコメントを引用します。まさに自然と向き合うときに必要な知識と姿勢を学ぶことができます。

屋外活動では落石、落木、落雪への注意は欠かせません。落石は岩石という点から気にする方も多いですが、落枝や倒木の直撃も致命的になる危険が大きいです。キノコなどが着生している樹木は枯死していることがほとんどです。菌類の働きでセルロースが徐々に分解され、土に還っていく自然のサイクルです。樹木に手を振れ、軽く叩き、必要に応じて軽く揺すってその朽ち果て具合を確認することも大切です。低気圧通過時の強風で揺らされて倒壊することや枯木でなくても樹冠が大きく葉が多いと、降雨後の水分が溜め込みやすく、春の湿雪の着雪でも重量バランスを崩すことでも倒壊することもあります。繰り返し負荷が掛かり落枝、倒木に至ったものかもしれません。自然界においては倒木は自然サイクルです。管理されていないエリアでの登山などでは長時間同じ場所に留まらないことも大切です。(Yahoo!ニュース|日本山岳ガイド協会認定ガイドカメラマン加藤智二さん

四季を通してどういう場所かを知る

山林、森は大自然の中にあります。春と秋は美しい風景に和まされます。一番イメージしやすいですよね。

一方で夏には暑くなります。このところの気候温暖化で、避暑地であっても酷暑といった日は普通になってきています。

冬は雪の心配があります。雪が降ると除雪作業といった場面に遭遇します。自然相手なので人間に都合のよいことばかりではありません。

山林を見に行ったら、すぐに購入を決めるのではなく、シーズンを変えてまた見に行くといった少し長い目線で品定めしていくのがベスト。

何より、四季によって大きく変化することを念頭におきましょう。

山林を買った後のことを知っておく


「敷地は500坪で近隣は閑静な別荘地、平坦なところもあり、木々も美しい景観です」といったコピーを惹かれて現地へ行ったとします。パッと見たところコピー通りのような雰囲気です。価格もそこそこ、じゃあここに決めよう!・・・というのは軽率です。

なぜなら、山林は購入した後にやらないといけないことが山ほどあるからです。伐採、伐根、ならし作業・・・使えるようになるまでにたくさんの工程を踏みます。そしてその中には自分でできない作業も待ち構えています。

例えば「これくらいの木なら自分で伐れるだろう」というのは浅はか。周辺に建物があったら方向を誤って直撃してしまうこともあります。木の密集度合いではかかり木になって素人には手に負えません。無理して作業すると命の危険にさらされます。これはちなみに体験談です。

伐採は人力でできる範囲には限界があります。土地をならす作業は広ければ広いほど重機が必要になります。水道は引き込めると記載があったら大丈夫というものでもありません。土地の形状、家や浄化槽を設置する位置によって個別調整が要るし、その分費用も掛かります。

こうした作業を外注するとすぐに百万円単位の金額になります。ちょっと見ただけで飛びついたら後々大変な事態になります。周辺事情に詳しい人に話を聴くなどできることをやって購入判断をした方がいいです。

山林さがしリサーチをはじめる

実際に物件を探す作業に入ります。闇雲に探すと時間と手間とコストが掛かるので、手順を踏まえてやっていきます。

条件を決める

山林で何がしたいのか?どういう姿を目指すのか?というゴールイメージから、物件選びの条件をピックアップしていきます。

山林の状態はどうなのか?広さ、平坦地の割合、樹種、価格・・・いくつかの視点があります。

さらに交通アクセスは?接道はあるか?水の確保は?下水処理はどうするか?建物が建つか?周囲の民家は?ハザードマップ的には?といったものが挙げられます。

これら全てを満たす物件はそうそうお目にかかれません。ほぼどの物件にも一長一短が発生します。

「アクセスはいいけど、入口に民家がある、日当たりが悪い、平坦地が少ない、谷で増水しそう・・・」といったケースや「環境はそこそこだけど、道路からの音が聞こえる、すぐ隣りに家がある」

実際に探し始めるとこんな状況に出くわします。ちなみに僕たち自身の経験談です。

なので、ピックアップした条件の中でも、「これだけは絶対にはずせないよね」というものを絞り込んでいってください。

僕たちの場合、「きれいな木々に囲まれた森の中で、周りに気兼ねすることなく、静かに焚き火ができる場を共感できる人たちに提供したい」というのが持っているイメージでした。

それを叶えるために、美しい木々(樹種)があること、アクセスがそこそこ良いこと、広さが500坪以上であること、周囲に民家がないこと、水道接道のインフラが整えられること、価格が予算内であることを最優先にしました。

実はこれら満たすだけでもひと苦労でしたが、ぶれることなく探し続け、ほぼ条件をクリアする物件に出会うことができました。もしこのうちのどれかを妥協していたら、きっと後悔していたと思います。

山林を探していく方法

山林関連ネット、地元の不動産屋経由、現地でのヒアリング、自分で所有者を見つけて交渉するといった方法があります。それぞれに一長一短あってこれがベストというものはありません。

探しながらいろんな手段を講じていきます。大事になるのは、あきらめずに地道に調べること。物件と出会えるのはご縁とタイミング。ご縁をつかむには絶えず動いている必要があります。

以下は、僕たちが実際に使った選択肢です。参考にしてみてください。

山林物件を見つけたら現地へ

これは!いう物件を見つけたら、現地を見に行くようにしてください。ネットで掲載されている情報、写真と現地の状況には大きな差があるのが常です。必ず自分の目で確かめるようにしましょう。

僕たちもフィールドを見つけるまで、30件強の物件を見に現地へ行きました。

ネットには「別荘地に隣接する好立地、平坦地あり、沢もあり」と書かれていても、実際現地に行くと、民家を通らないと中に入れない、平坦地はごくわずかで、沢といっても水が流れていない微妙な感じといった物件もありました。

これはほんの一例ですが、ネット情報を鵜呑みにせず、必ず自分の目で確かめるようにしてください。

時間が掛かることを念頭に置く

このように山さがしには、それなりに時間と手間とコストが掛かります。毎日ネットを見ていても一向に良い物件が出てこないといった状況は普通にあります。

ちなみに僕たちの場合、最初の物件にたどり着くまで約1年、今の物件にたどり着くまで約1年半の期間を要しています。あきらめることなく、ずっと探し続けていくという地道な努力が必要です。

どこかで決断、前に進める

先に書いた通り、自分の思う条件を全て満たすような物件はありません。何かに目をつぶらないといつまで経っても事は前に進まなくなります。「ここだけははずせない」という優先条件を決めるのが重要という理由がここにあります。

自然そのままの造形物が山、人工のものとは違います。今出会ったフィールドのここに惚れた!もう二度と巡り合えない!といった感性も選択のものさしとして大事にしたいものです。

価格はどうか?

山主(山の所有者)は高齢化しています。高齢化に伴い、山の手入れや管理ができず、ほとんどの山林が放置状態になっています。

さらに高齢化の先にあるのが相続の問題です。親が亡くなった後、そのままになって誰の名義なのかわからない土地もそれなりにあります。

また山主には自分の山に愛着があって、ちゃんと面倒をみてくれるような人にだけ渡したいといったようなケースもあります。

こうした背景もあり山林には相場がありません。売り主の考え方で価格は決まります。宅地を買うような感覚で価格を見ていくことはできません。

注意したいのは、価格が安いからといって飛びつかないことです。安いには安いなりの理由があります。斜面がほとんどを占める、ずっと売り手がつかない、住宅用としては使い道がないなどです。

僕たちも購入に際し、隣接している山林の所有者を調べました。すると登記簿に記載されている人はおそらくもう亡くなっていて、子供世代に引継ぎがされていないようなもの、親世代のままの名義で残っていて、子供世代は一度も現地を見たことがないようなものなどありました。

境界は確認できるか?


ではここから具体的に山林の状態のチェックポイントを解説していきます。

国土調査の中に地籍調査というものがあります。地籍調査とは、主に市町村が主体となって、一筆ごとの土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置と面積を測量する調査(国土交通省)です。

地籍調査が済んでいると近隣土地の境界が明確になっています。でも多くの場合、山林はそこまできちんとしたものはありません。

まず、公図と呼ばれるものを取り寄せます。最寄りの法務局に出向くか、ネットからでも入手できます。(登記情報提供サービス

公図とは、法務局に備え付けられている土地の位置や形状を確定するための法的な地図です。明治時代の地租改正により、土地に番号(地番)をつけた地図がもとになっています。

里道(りどう:道路)を赤く塗り、水路を青く塗っていることが多いため、現在では赤道(あかみち、もしくは赤線ともいう)や青道(あおみち、もしくは青線ともいう)と呼ばれています。

赤道(あかみち)といった言葉は、山林に関わると出てくる専門用語なので、知っておいた方がいいです。

さらに土地の用途というものがあります。これは登記簿の「地目」を確認すればわかります。「山林」「原野」「雑種地」などになっているはずです。

ちなみに僕たちが現地見学したときは下記のような感じでした。担当者の同行はなく、自分たちだけで行きました。

現地を歩きながら担当者と電話でやりとり。一部のみ境界の杭を見つけた以外は不明です。そもそも杭なんかないのでメジャーで計って見当をつけます。

担当者は「ここを見てくれ、あそこはこうなっている」、僕たちは「ここにはない、どっちの方角?」などと話がかみ合いません。

その場で写真を送ってもよくわからないまま。結局、自分で歩いて大まかな場所を把握するに留まりました。

このように公図だけで現地を確認するのは至難の業です。業者に同行してもらうか、もしくは近隣の人と会話ができる状態にすることをおすすめします。

平坦地はあるか?

平坦地があるか否かは最初の盲点です。そもそも山は斜面でできています。平坦地がないと、小屋などの建物を建てる際に苦労します。キャンプサイトも平坦でないと寝るのに困ります。

「結構広さがあるけど価格が安い」といった物件には斜面が多い場合があります。別荘地の売地などにも斜面のものが多数あります。こうした別荘地では斜面に特殊な工法で家を建てています。

斜面がどの程度あるかは実際に現地へ出向き、自分の足で歩いてみてください。斜面は見た目と歩く感覚で全く違います。思った以上にきついというケースが多々あります。写真で見てこれならそうでもなさそう・・・という判断はNGです。

ただ一方で山林だから斜面は当たり前という視点も必要です。そして斜面だから全部だめというのではなく、斜面だから良かったという点もあります。

僕たちのフィールドもそれなりに斜面です。フィールド上の方に道具を収納した物置があります。下で作業していて足らない道具が出ることがちょくちょくあります。

すると物置まで取りに行くことになります。距離にしたら50メートルほどですが、斜面を登るのでちょっとしたプチ登山になります。往復したらそれなりの運動量です。

毎回行き来していたら、疲れてしまいます。そこでどうしたらいいだろう?と考え、工夫します。そしてつど改善策を講じます。

この流れの中、気づいたことがあります。それは無意識のうちに身体と頭を動かしているということ。山で暮らす人が健康そうなのは、毎日こんな生活を送っているからだと感じるようになりました。

森とともに暮らすということは森の中で生活させてもらっているということ。自分たちの前に森ありきで考えていきたいものです。

接道はあるか?

接道とは敷地に接する道路があるかという意味です。道路がないと現地へ行くことができないし、建物を建てるときにも支障が出ます。

また、その道へ車が乗り入れ可能か否かも重要なチェックポイントになります。人が通るほどしかない道、隣の敷地を通らなければ入れない道、隣接住民の許可を得ないと中に入れないような道などはNGです。

接道確認をしていると、先に書いた「赤道(あかみち)」の話が出てきます。赤道とは、古くから道路として利用された土地のうち、道路法の道路の敷地とされずにそのまま残った公有地のことを言います。個人使用するときには、占用もしくは払い下げといった手続きが必要になります。

フィールドまで車は入るか否かも重要です。僕たちが見学した物件の中には、車を停めたところから50メートルほどが獣道状態のものもありました。接道と同時にチェックすべきポイントです。

水は確保できるか?

なんといっても水はライフラインです。水の確保には水道と井戸の二つの選択肢になります。井戸は出るか出ないから始まります。谷の方がよく、山上であればあるほど出てきません。水が溜まっている流れをイメージしたら当たり前のことですね。

八ヶ岳でログハウスをセルフビルドした知人は、もし出なかったとしても費用の7割を支払うという条件で工事を進めました。結果出たから良かったもののリスキーな話です。

水道の引き込みは元になる水道管がどこにあるかで決まります。もし比較的近くにあるようなら可能性があります。行政の手続き、土地までの距離、どこに何を設置するかなど進めていきます。

僕たちのフィールドは水道を引き込みました。市役所に話をして、第三セクターにまわされ、要領を得ないのでまた戻る・・・といったところから始まりました。

最初に見積りをとった業者の動きが悪く、おまけに見積り額も膨大で、別の業者をやってもらうというような段取りの悪さがあったのも原因ですが、仮設水道引き込みまで4ヶ月近く掛かりました。

ここまでは掛からないまでも、見積り作成と行政手続きには時間を要します。早め早めに動いていくことをおすすめします。

井戸も掘らず、水道も引かずに、個人でフィールドを楽しまれるような人は、周辺で一般利用できる湧き水スポットを見つける、または自宅からポリタンクで水を運んでいくというやり方があります。

日当たりはどうか?

場所の日当たりがどうかを調べてください。日当たりが悪いとイメージ自体暗くなります。雨が降った後も地面が乾くのに時間が掛かります。すると作業が滞ってしまいます。そもそも湿っぽい場所だと、行くのがいやになりますよね?

特に冬場に寒くなる地方でフィールドを探すのであれば、日当たりは重要です。なぜなら一度降った雪がいつまでも残って固まってしまうからです。雪が残っていると身動きがとれなくなります。

日当たりは少しの時間見学しただけはわからないし、季節によって変化があります。確認には工夫が必要です。

日当たり問題は、他の条件にばかり頭がいって結構盲点になりがちです。忘れないようにしましょう。

自然災害への対応は?

山林は宅地と違って自然災害と直結しています。災害時にどういう状態になるのかもチェックしておきたい事項です。

自然災害時対策の第一歩はハザードマップです。ハザードマップとは、自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図(国土交通省国土地理院)です。

ハザードマップで自分の土地がどうなっているのかを見ると、ある程度の危険度がわかります。必ずチェックしてください。

もう一つ、地盤がどうなっているのかも調べられたらベターです。地震が来たときの揺れなど建物にかかわる問題ですね。

僕たちのフィールドは粘土質の土壌でできています。山というより台地です。それがわかったのは実際に開拓を始めてです。掘るとすぐに層にあたるので何だろうと思っていました。

掘りにくいし水はけが悪いので、開拓にはいろいろと困る反面、その下は岩盤になっているので地震の心配がないと地元の人には聞きました。

探している中で、なかなかここまでは考えが及ばないかもしれません。でも自然災害だらけの今、住むとなると重要な点。頭の隅っこには入れておきましょう。

いずれも現地に行って自分の目と耳と足で確かめるのがベストであることを忘れないようにしてください。

下水処理はどうなる?

山の中には基本下水道が来ていません。生活排水を流す先は合併浄化槽を設置することになります。

浄化槽設置にあたっては、まず大きさを決めます。水道口の個数、建物の水道レイアウトなど使用イメージに合わせ計算します。5人槽、7人槽、10人槽と大きくなっていきます。

浄化槽の設置位置は敷地内の一番下がベターです。高度処理が必要になるエリアもあり、その場合は浄化槽+浸透処理装置で割高になります。ちなみに僕たちのフィールドはこれに該当します。

自治体により設置補助金があります。年単位の申請になります。注意点は、建物が建って水を実際に流すようにするまで設置できないことです。家を建てていないのに浄化槽の検査は受けられません。

僕たちは小屋ができるまでの間は、簡易の水場とレンタルトイレを利用、洗剤を流さない、ごみは全て持ち帰りという方法で乗り切りました。

電気は引けるか?

もう一つのライフラインが電気です。まず当座の対応として仮設電柱を立てる方法があります。近隣の電気工事業者へ問合せを入れます。すると業者から電力会社への申請が行われます。

僕たちの場合は、仮設電柱の設置までに1週間程度、費用は4万円弱でした。仮設電柱で注意が必要なのは電気代です。電気メーターをつけない状態なので、使っても使わなくても毎月1万円強の請求が固定で来ます。

最初は電気をそんなに使わないというような場合は、ポータブル電源で代用するなど考えた方がランニングコストを抑えることができます。

余談ですが、電気も水道もない中で開拓をしていると、今まで経験のない世界を垣間見ることできます。ごみは持ち帰る、汚水を流さないといった当たり前のことが自然に身についていきます。

不便さの中から学べるものは多くあります。これも開拓の醍醐味と言えますね。

家(小屋)を建てられるか?

テントだけでなく小屋などを建てたいときは、土地がどういう地域などかを調べます。

都市計画区域内で建物を建てる場合、接道義務というものがあります。原則幅が4メートル以上の道路に2メートル以上で接しているというものです。

接道がない土地、市街化調整区域、農地、保安林等には基本的に家は建てられません。

ただし例外もあるので行政に確認が必要です。例えば、農地は農家であれば売買できますし、許可を得られれば宅地に転用できる場合もあります。

僕たちのフィールドは、都市計画区域内の非線引き区域なので建物は建てられる、景観条例の一般区域ではあるが、規模が小さいので届出は必要ないという見解でした。

近隣の住民との関係は?

物件そのものにばかり目が行き、近隣住民との関係は買う前は意識の中にもないものです。でも実はこれが一番重要になるものかもしれません。

人とのトラブルほど精神的に負担のかかるものはありません。

僕たちのフィールドは、別荘地に隣接しています。隣接したお宅とは境界のことで予期できない協議が起こりました。

今まで静かに別荘ライフを送っていたのに、いきなり見ず知らずの第三者が押し寄せてきて騒ぎ出す・・・そんなイメージをもつと心配になるのも当然です。

個人が単に住む程度ならまだしも、事業を行うとなると話は別です。事前の説明は早め早めに念入りに行うことをおすすめします。

もともと住んでいらっしゃる人の目線になって、丁寧に接し、会話していくのがベスト。自宅の近くに他県ナンバーの車がやって来て、見たことがない人たちがウロウロしている・・・自分だったらどう思うでしょう?

住民一人ひとりに説明するというのは物理的に難しくなるでしょう。区長さんと呼ばれるようなその地域のまとめ役をしている人に早い段階で概要説明をしておくのがベターです。

その後、フィールドがある地域の役員さんに集まってもらって説明会もしました。

「どんな場所になるのか図面を出してほしい」「市役所の窓口は?」「いつから事業開始なのか?」「どのくらいの人を入れていくのか?」「道はどうなるのか?」・・・不安に感じることを洗いざらい話していただきました。

何より火の問題。消火栓などを含め、安全面をしっかりしてほしいというのが一番の要望でした。逆の立場なら当然のことですね。

当時考えていた、焚き火を小さく囲んでコミュニケーションができる場、会員制で少人数、こんなイメージでやっていきたい・・・といった内容を懇切丁寧に説明し、理解を示していただきました。

それ以降も消防署へ匿名で通報があったり、隣接エリアのまとめ役の人のところへ問合せが入ったり、役所へ近隣住民が訪れて不安を伝えたりと、いろいろなことがありました。

もう一点、定期的にまめに説明する必要があります。「一度説明したから大丈夫・・・」なんて思っていたら間違いです。地域ではだんだんと話が広がっていきます。自分たちが忘れた頃に指摘が入ってくるといったようなこともあります。

「山の中で焚き火をするって話を聞いたけど大丈夫なの?」と言われたのは開拓がスタートして半年以上経ったときでした。

この例は少々特殊ケースですが、いずれにしても近隣住民との良好な関係づくりは極めて重要です。ここに歪みが出ると事は進まなくなるくらいの話です。

「自分の山なんだし、自分たちがたのしめたらいい」「買った山だから何をしてもいい」といった乱暴な考えは絶対に持たないでください。

長年にわたり焚き火の仕事もしています。山や森で焚き火をしてそのままにするような人を許すことはできません。山に入る資格がありません。

周囲には他の山主さんがいるし、山で仕事をしている人もいます。もしそんな気持ちがあるのなら、山の購入はやめてください。

不法投棄されないか?

山林の道端に家電品、家具、タイヤなどのごみが捨てられているのを見たことがありますよね?人里離れた山の中は不法投棄される可能性が高いです。

僕たちのフィールドはご縁があって別荘地に隣接しています。別荘地付近だと部外者の出入りも少なく、ごみを捨てられるということも今までのところありません。

部外者が入ってくると、ごみの問題だけでなく、荒されたり盗難に遭ったりということもあります。人気YouTuberの中には被害にあった人もいるみたいです。

山の中で人が来ないところがいい・・・安易に考えがちですが、こうした視点も持ち合わせておかないと、開拓を始めて以降問題が起こります。

そもそもこうした心ない行為が絶えないこと自体、虚しい話ですよね。

そこそこ近隣に店舗、病院、ガソリンスタンドはあるか?

生活品でちょっと不足のものを調達する、けがをしたときなどのためにコンビニ、病院といった施設があった方がいいです。近隣でない場合はどこにあるのかを事前にチェックしておいてください。いざという時、慌てずに済みます。

山の中という立地を考えると真逆の話ですが、これはこれで重要です。

さらに開拓作業をしていると、いろいろな備品や道具が必要になります。それがないと作業が進まないというケースも出ます。たちまち入手できるように、ホームセンターや100均が近くにあった方がベターです。

ネットは引けるか?

ネットがないと生活に支障をきたす世の中、インターネットもライフラインの一つと言えるのではないでしょうか?

まず4Gがつながるか否かです。通常電話が難しくてもLINE電話などあれば代用できます。ネットでの検索もできた方がいいです。

実際に生活したり仕事をしたりということになるとWIFIが必要になります。拠点を構えるのであれば光回線が引けるのがベストです。電柱が近くに来ていればほぼ大丈夫です。

僕たちの場合は、開拓作業中でまだ小屋もない間はポータブルWIFIで代用しました。不安定なときもあり、光回線の完全代替えまでには至りませんが、そこそこという感じでした。

立木の種類は?

敷地にはどんな樹木が生えているかを確認します。日本では多くの場合、針葉樹としてスギやヒノキが多くを占めます。次にエリアによってカラマツといったあたりかと思います。

樹種によって景観や雰囲気は大きく変わります。昔ながらの里山の風景がいいのか、広葉樹が混じった雑木林がいいのか、北欧風の森林がいいのかといった感じです。

このあたりは何に重きを置くか、フィールドで何がしたいかによって変わってきます。僕たちは木々の美しさの優先順位が高かったので、樹種はしっかり見ていきました。

広葉樹を中心にした森林は美しく、しっかりと根を張っています。実際に森林開拓に携わってみて、そのことは実感しています。

過去どんな場所で今後どうなっていくのか?

登記簿の履歴を見えるとおおよそ今までどんな所有者がどんな流れできているかがわかります。あとは近隣の人に訊いてみます。

「数年来、人が入っていないけど赤道はこうなっている」「太陽光が入ろうとしている」といった情報を入手できます。

どこまで調べられるかはその土地によって変わりますが、この視点を忘れないようにしましょう。

隣接地の所有者の確認は?

山林は隣接して所有者がいます。隣りの敷地の倒木の危険性がある、境界線のことで共有しないといけないことがあるなど、開拓をしていると問題が発生することがあります。

そんな時のために、隣接している土地の所有者と連絡がつくようにしておけるとベターです。

僕たちの場合は、事業を展開するということもあり、登記簿を調べて隣接地すべての所有者に手紙を送りました。ほぼ返事はありませんでした。

後々さらに調べていくと、登記簿上の所有者は既に亡くなっていて、子供の世代に移っていなくて連絡先がわからないというケースもありました。「山林は負動産」と言われるように、相続の問題がついてまわります。

山林を維持管理していく気持ちがあるか?

スギ、ヒノキといった人工林を放置していると、水源かん養機能が低下したり、土壌が流出し災害を招くことにつながります。

森林に降った雨や雪などの降水は、すぐに森林から流れ出ることはなく、地中(土壌)に浸透し、地下水となりゆっくりと流れ出ます。 このため、洪水や渇水が緩和されたり、澄んだ美しい水を私たちに供給してくれます。 この働きのことを「水源かん養機能」と呼んでいます。引用;森林・林業学習館

知り合いの林業家さんは「山の手入れ」という表現を使っていました。畑と同じで雑草を刈ったり、伐採して間引きしたり、払った枝を運んだり、いろいろとやることが出てきます。

ずっとそれをやり続けていく気持ち、ある意味覚悟をもって臨めるかです。

一方で自然災害で何が起こるかわからないのが昨今です。自分の土地にある木が倒れて、隣接地の建物に被害を与えてしまうということも想定されます。

僕たちの土地にもそうした木が数本あったので、伐採業者に処理してもらいました。もちろんそれなりの費用が掛かりました。知らない間に木の枝が伸びてお隣さんの電線を切って停電にしてしまったこともありました。

逆に大雨の翌日に隣りの敷地の大木が倒れてきて所有物が破損したこともありました。倒木処理には数日作業しないといけません。決して良いことばかりではないのです。

開拓といった創る過程はたのしいもの。でも購入後、ずっと山の面倒をみていくのは大変なこと。僕たちもまだ現在進行形ですが、心してかかりたいと思っています。

山林の維持には、前述した近隣住民との関係性も含まれています。こまめに足を運び、手入れをすることで不審者が入ってくることもなくなり保全にもなります。結果、近隣の人たちにも役立つことにつながっていきます。

後々のことも少し考えておく

買う前から売る時のことを考えるなんてナンセンスと思ったかもしれません。でもしばらくして、諸事情が発生して手放さないといけなくなるケースも考えられます。

その時、第三者に引き継いでもらえるような状態を視野に置けるとベストです。接道がきちんとある、水道が来ているといったインフラがあると、かなりのメリットになります。

「見た目が重要。境界がわからない、何もないより小屋が建っている、境界に柵があるなどの方が評価は上がる」とある不動産屋は言っていました。

フィールド山林整備が行き届き、小屋などそれなりの建物があると、さらに資産価値が上がり、万が一、売却しないといけないという状態になったときも有利になります。

法律・税金・相続の問題


山林を購入契約した後には届出が必要になります。例えば都市計画区域外で10000㎡以上であれば、2週間以内に行政窓口に届出しないといけません。(※10000㎡未満でも「森林の土地の所有者となった届出」が必要)詳しくは行政へ確認します。

このように不動産を扱うには、宅建法、民法、建築基準法、国土利用計画法などいろいろな法律が関係します。固定資産税をはじめとした税金も発生します。もともとの所有者には相続の問題が絡むこともあります。

ちなみに固定資産税がどのくらいかかるかは気になるところでしょう。固定資産税の基準になる固定資産税評価額は実勢価格の70%と言われています。おおよその目安として参考にしてみてください。

諸問題が起こらないとわからないことが大半ですが、そのつど必要な知識を習得していく場面が出てくることを知っておきましょう。

できたら弁護士、税理士、一級建築士など各分野の専門家の知り合いがいるに越したことはありません。

自由と責任はワンセット

自分だけのフィールドがあれば自由な空間です。自分がやりたいことを実行に移すことができます。でも自由にできるという裏側には全ての事柄に自己責任が伴います。

自由と責任がセットになるからこそ、誇りをもって開拓できる。そんな想いで進んでいきたいと思います。ある意味、自戒を含めて敢えて記しておきます。

まとめ

思い返せば、最初の頃、静かに大人の焚き火ができる場づくりがしたくて、山林さがしに奔放してきました。でもなかなか見つからず暗礁に何度も乗り上げました。

さあ気持ち新たに動いていこう!と思った矢先、新型コロナ禍で動けないときもありました。

すったもんだしながら、今のフィールドと出会い、開拓作業を続けています。やっていくうちに自然の大切さ、環境への意識を認識するようになりました。今まで知らなかった世界に広がりを感じています。

開拓作業はなかなか進みません。自分で作業するのを苦労と感じるか、自らの手でフィールドを創っていけると感じるか。後者であるからこそ得られる価値です。

何もない、ゼロから、いやもしかしたら不利な状態から自分が求める里山にしていく。目指す姿へ向け、いくらでもチャレンジできる。そのことにエネルギーが湧いてくる。そんなプロセスをぜひ味わってみてください。

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