森の暮らし&開拓体験フィールド・別荘地活性化活動を始めた理由

森の開拓、森の恵み、森の循環、そして森を育てる・・・。
素の自分に戻る、リセットできる場所をつくる・・・。

人生を自分の手で切り拓いている実感を得る。

こうした想いにかられるようになるまでには、いくつかの出来事がありました。ここでは僕が現在に至るまでの経緯を記します。お時間があれば読んでいただけたらうれしいです。

働き方生き方をサポートする


働き方生き方にモヤモヤを抱える人たちが自分の足で立つ術を身につけ、いきいきワクワク元気に毎日を送ってもらう。サラリーマンを23年やって独立、その後2023年まで13年に渡ってやり続けてきた生業です。

そうした人たちに共通して必要なことは、「自分の心に素直になること」「素直な気持ちでシンプルに考えること」でした。

実は現代社会では難しい話です。じゃあ、どうしたらそうなれるのか。あらゆる視点でアプローチしてきました。試行錯誤を重ね、柱になったのが焚き火による場づくりでした。

焚き火でフラットな場をつくる


学生時代に経験した焚き火の場。火を囲むと言わなくてもいいことまで話してしまう、そのままの自分が出せる空気感・・・そうだ、焚き火をしよう。思い立ちました。

それから10年弱の間、焚き火でコミュニケーションの場をつくる活動をやってきました。キャンプ場を使いながらそれなりに成果を得てきました。でも借りた場所では思ったようなことができない。行き詰まりを感じます。

新たな場所を探し始めました。2018年、ログハウスを利用してプライベートで焚き火がたのしめる宿の運営を始めました。それから4年間、おかげさまでご愛顧いただくまでになりました。

「ここでは物足らない。本当にやりたいことはこれではない。チャレンジしよう」その間にもくすぶっている気持ちです。そしてまた新たな土地を探し始めます。

こうして2021年末をもって、焚き火の宿にピリオドを打ちました。

開拓という実体験を重ねる


誰にも気兼ねせず、自由に静かに焚き火ができる場所をつくっていきたい。もっと広いフィールドで可能性を広げていきたい。当初はその想いで土地を探し始めました。

焚き火は木から生まれます。落ちた木枝、割った木から薪ができます。焚き火の先には森の存在があります。こだわったのは木々の美しさでした。

1年半探し続けて、やっと見つけたこの地。何もない倒木だらけの荒れた森林の開拓がスタートしました。

開拓といってもずぶの素人の58歳と56歳の夫婦ふたりの手づくり作業。木をどんどん伐り倒したり、重機を入れてガシガシやるような開発行為とは真逆の世界。

その時その時、森のことで考えられることを考え、自分たちのペースでできることを天候にも左右されながら少しずつ進めてきました。

こうした毎日を送る中、感じるようになったのは「開拓作業そのもののたのしさ」

道を広げるためにスコップで土を掘る、次々に出てくる根を一つひとつ切る、草を刈る、土を運ぶ、倒木を伐採する、丸太を運ぶ、玉切りにする、木枝を拾って薪にする、穴を掘る、落ち葉を集めて腐葉土をつくる、杭を立てる・・・

一つひとつの作業は単純、ややこしいことはありません。その分、ひたすら目の前のことに一生懸命に向き合わないと前に進みません。

没頭、集中、頭の中は真っ白。

作業をしているときはそのことだけしか頭にありません。作業を終えると身体は目一杯疲れます。でもその疲れが何とも心地がいい。都会で感じるいやな疲れはかけらもありません。

日が昇って日が沈むまで全力で作業に取り組む。その日その日で物事は完結。そして明日はこうやろう!と活力が湧いてくる。

林業、土木業、造園業、建築業、農業・・・開拓をしていると、さまざまな領域に顔を突っ込みます。今まで経験したことのない「人生初」の連続。新鮮さと刺激の毎日。学ぶ意欲がかき立てられます。

ゼロから自分が思い描いた絵を自分が思うように切り拓いていく。やっていく中で苦難にぶち当たる。ぶち当たったつど、工夫しながら乗り切っていく。アイデアを出していく。そしてまたやりたい絵を描き続ける。

ある意味、森の開拓は自分の人生づくりと似ています。

開拓でしか味わうことができないこの感覚を分かち合いたい。そしてご縁のあった人を元気にしたい。いつしか自然にそんな想いにかられるようになりました。

森の開拓体験フィールドづくりは、こうした足跡から始まっています。

森の小さな家をセルフビルドする

最初、焚き火のフィールドをつくろうと考えた頃は、「2~3日滞在できる小屋でもつくろう」という感じでした。開拓作業をしながら、地に足ついた活動をするには現地に根を下ろさないといけない。二拠点ではなく移住だ!考え方がシフトしていきました。

ちょうど同じタイミングで信州小諸の近隣に住む知り合いの一級建築士とのご縁もありました。「よし!ちゃんと住める家をつくろう」そんな想いにかられました。「どうせやるなら自分の力でできるところまでやってみたい」いつもの無謀な好奇心が湧いてきます。

こうして土を掘り起こして基礎をつくるところからスタートしたのが2022年10月。その後、土台、柱、桁、梁、そして屋根、壁と段階を進み、ほぼ外形が見えるところまでたどり着きました。(2023年8月現在)

小さいながらもきちんと家をつくることはそれ相応の取り組みになりました。それこそわからないことの連続。どうなるかが先が見えない手探り状態。何度も「もうだめかも」という場面を繰り返し、失敗を重ねながら一つひとつ丹念に積み上げてきました。

建築という今まで全く接点のなかった世界、まさに毎日が「人生初」の連続です。

そしてその出来事一つひとつが人生に置き換えできる意味深いものでした。そしてこれからもきっとそうなることでしょう。

こんな体験を自分たちだけに留めていくのはあまりにもったいない。

そこで「森の暮らしづくり」と名付け、自分たちがやってきた足跡を整理し、こんな暮らし方、生き方に関心をもつ人へ伝えていきたいと考えています。

森を育てる意味を知る


フィールド内に数十年自生するアカマツ。来た当初からできるだけ木は伐らないで進めていきたいと考えていました。でも実際に現場に入るとそんなきれいごとだけでは進みません。

枯れた木はいつ倒れてくるかわかりません。風雨にさらされると危険度は上がります。ある日の朝フィールドに到着すると、大木が二本倒れて、そのうち一本がテントを直撃し粉々になっていた光景を目の当たりにしたこともあります。

木が生い茂ると光が入らなくなり、下草も生えずひょろひょろのものが増えていきます。適度に間引き(間伐)しないと森は育っていきません。森の手入れという言葉を知ったのがこの時でした。


「危ないから倒さないといけない」アカマツは、地元の人にもどちらかというと厄介者扱いされています。危険性から言えばその通りです。でもアカマツにも良いところがあります。


倒れて腐ったアカマツの枝の根本からはファットウッドという自然の着火剤が採れます。冬の低温下でなかなか火が着きにくい環境でもファットウッドを削ればすぐに着火。とても優れもの、しかも天然物です。


秋になると地面を覆うほどになる落ち葉。雨や雪にさらされ、微生物が長い時間をかけて分解することで、やがて土の肥やしになる。まさに自然の腐葉土です。粘土質の土壌にはこの自然の腐葉土が大切な役割をしています。


森にいると空気のおいしさを実感します。まさに澄んだ空気です。木々は育つ過程で空気中の二酸化炭素を吸い込み、きれいな酸素を吐き出します。そんな理科の時間の話を思い出します。

これらは一つの例でしかありません。森の中にはまだまだ知らないことが満載、いろいろな事象があります。まさに森の恵みひいては森の循環。

まだまだ勉強することが山ほどあります。でも森を育てるという行為がどれだけ大切なことかの一端を感じるようになりました。

別荘地とのご縁


山林を探し求めるとなぜか出てくる物件の中に混在するのが別荘地。「別荘地?管理された場所なんて面白くないし使えないよな」最初はそう思っていました。

そうした中、別荘地物件を一つひとつをみていきます。すると多少荒れてはいるものの、木々の感じがきれい、周囲の環境が良さそう・・・選択肢に加えてみようかと思うようになります。

僕たちは1000坪を超える広さが欲しかったので、別荘地そのものを選ぶには至りませんでした。ただご縁があって別荘地に隣接した土地を手に入れました。そのことでより客観的に別荘地を知ることができるようになりました。

別荘地というとリッチな人たちが住むイメージがありますよね?でもそれはひと昔、土地神話など言われた時代の話です。その頃に買い求めた物件がそのまま放置状態になっていて物件探しにヒットするわけです。

土地の持ち主は子供たちに引き継げるわけでもなく少しでも早く処分したいという物件も多々あります。宙に浮いた状態になっているわけです。

こうした背景もあり、道路に倒木がそのままになっていたり、草木がそのまま伸びて荒れた土地になったり、ゴースト化している別荘地も少なくないと言われています。

一方で別荘地というだけあって、景観は良く樹木は美しいものが多い。少し手を入れ整備したら見違えるようになる森林もたくさんあります。そんじょそこらの山林とは種類が違います。

自分たちの開拓フィールドを別荘地隣接の地に定めたことから、こうした現実を目の当たりしてきました。「もったいない。何とかならないものか・・・」想いは募っていきました。

そして開拓を始めると、別荘地に住む人たちとも接点をもつようになりました。多くは70代で人生の大先輩ばかり。ちょくちょく耳にするこれまでの経歴は多彩な方ばかり。

「頑張ってね」「期待してるよ」と散歩の途中でお声がけをいただく。農家さんでもらったものをお裾分けいただく。こうして気にかけていただける人たちの何かお役に立つことはできないだろうかと考えるようになりました。

「美しい自然をもっと生かしたい」「活用アプローチを変えたらもっと有効利用できる」「とにかく放置されているのはもったいない」「居住者がたのしく元気になることがしたい」

別荘地活性化活動はこんなところから始まっています。