自分で小さな家を建てる|屋根づくり編|森の暮らしづくりレポート⑤

my forest,my home。自分の森で自分の家をつくる。ど素人アラカン夫婦二人が一級建築士のサポートを受けながら、森の中の6坪ハウスをDIYするプロセスを工程ごとにまとめた記録です。

屋根の施工には順番があります。特にケラバ、軒下唐草といった水切り金物は全く未知の世界。メーカーの施工マニュアルやYoutubeを行ったり来たり・・・頭を悩ませました。

そして何より天気が重要。晴れが続く間に施工してしまわないと養生が大変な状態になります。本記事ではど素人が人生初の屋根作業をしたプロセスを実体験でまとめています。

目次

屋根材の入手

材料として必要になるのが、野地板にする合板、防水シートのアスファルトルーフィング、そして屋根を貼るアスファルトシングルの3つ。


合板は屋根上に運べる重さを考慮します。当初9ミリで考えていましたが、たまたまコメリで安く手に入るものが厚み12ミリのものだったのでそれにしました。

種類は特類を選びます。特類とは、屋外又は常時湿潤状態となる場所で使用することを主な目的とした接着の程度の要件を満たすものをいいます。

24枚のまとまったロットが必要です。建築資材業者にも確認、比較検討して朝イチで買いに走りました。


アスファルトルーフィングは普通にホームセンターで購入できます。1本1メートル幅で20メートル巻きといった感じ。横に貼っていくのでそれに合わせた量が要ります。

ネットで専門業者の記事を読むと、ルーフィングにもいろいろなものがあります。雨漏りを防ぐには屋根材よりもルーフィングが重要。屋根材のスキマから侵入した雨水を外へ流す働きをします。

ただルーフィングは経年劣化して破れるので、それなりのものを選んだ方がいいとのこと。

アスファルトルーフィング940というものが普及品で安価、でも耐用年数が10年程度しかありません。その一つ上に改質アスファルトというのがあります。これだと20~30年。

最初はわからず940規格のものを買ってしまいました。後から調べてわかったので、改質アスファルトのものを追加で購入、940規格のものは倉庫や外トイレに使うことにしました。


一番苦労したのがアスファルトシングル。アスファルトシングルとは北米で使われている屋根材。軽くて切ったり扱いがしやすく、仕上がりがオシャレ。欧米は自分で家を手直しする文化があるから広まっているそうです。

ところが日本では屋根を自分でやるなんて、あまりないのでホームセンターで取り扱いが少ない。ネットでみると買えそうですが、納期に時間がかかります。

おまけにさあやろうと思ったのがゴールデンウィークに突入したタイミング。ネット店舗が軒並み休みに入ります。

あちゃー、どうしようと探していたら、たまたまいつも通っているコメリPROに一点もので在庫があるじゃないですか!これは奇跡。すぐさま取り置き予約しました。


さらに水切り金物なるものが必要です。これは雨水を合板に回らせないために設置する金物てです。予約したアスファルトシングルに推奨のものがベストですが、これがまたどこにも売ってません。

いろいろ探した挙句、群馬に最近できた大型ホームセンターに在庫があることを発見。早速取り置きを頼んで、翌日軽トラで引き取りに向かいました。まずは材料を揃えるところからすったもんだ、いつものことですが笑

屋根用の靴入手


高所作業は危険です。おまけに高所恐怖症もあってビビります。命綱とかいろいろ考えましたがまずは靴かなと。ネットで検索すると屋根靴を比較している記事があって熟考チョイス。

ミドリ安全という専門メーカーの靴を購入しました。これが絶妙のフィット感。屋根にも吸い付くような感じです。通常作業でも使えそうで5000円ほどの価格ですが良い品を手に入れました。

垂木の出っ張りを揃える

垂木はそれぞれに長さが異なります。いったん取り付けた後に一番短いものに合わせて切って揃えます。

水下の低い場所は梯子に乗って計測、墨付け、作業しました。が、なぜか一本だけ1センチ短い!いつものことですけど笑

苦労したのが水上の高い場所。地上5メートル以上あってどうやって切るのか?いろいろ考えた挙句、合板を下地で仮止めして、その上に寝っ転がって切ることに。

墨付けでメジャーをあてるのから恐怖。切り始めると建物が揺れる。体勢が悪いのでノコギリがうまく引けない。とか苦難の連続の中、何と9本切り落とすことができました。

やはり、先に壁材を貼っておいた方が建物が安定して怖さが軽減します。

野地板合板を貼る


まずはストックしておいた合板24枚をフィールド下から運んできて2階へ持ち上げる作業から。いつもながらの超肉体労働。スキマを通して上げるにはコツが要りました。


さあ初の屋根上作業。どんな感じになるんだろう?不安になりながらのスタート。さすがに高い。足がすくみます。滑らないようにとネットで調べて高所作業の靴を購入。これがフィット感が良くていい感じです。

軒下を数センチ出っ張らせて貼っていきます。するといきなり垂木と揃わない。測ってみると垂木によって1センチほど短いものがあります。あちゃー!

センターを揃えて、まず一番下の2枚で基準をつくるとうまくいく、と思いきや8枚くらい貼ったところで端っこがはみ出ているではないですか!

垂木が反っていてセンターがズレていたのが原因。このまま貼っていくと一番上までいったとき、かなりズレてしまいそうです。やむを得ず、釘を全部抜いて貼り直しする羽目に。おかげで屋根上作業にも少し慣れました。


苦労したのは垂木と合板の位置を確認する作業。釘打ちは垂木の上です。最初墨付けをしましたが、垂木が反っているので墨のまま打つと空打ちになるところが出ます。なので合板一枚一枚ずつ垂木の位置を確認しながら進めました。


あと膨大な釘打ちの量。15センチ間隔で打つのですが、そうすると合板一枚あたり50本、全部で1200本にもなります。暑さの中、玄能手打ちは3時間以上に及びました。

ルーフィングを貼る

ルーフィングは雨漏りの生命線と業者の人は発信しています。いろいろな種類があって単なるアスファルトルーフィングは940という規格で安価だけど耐久年数が10年と短い。その一つ上のクラスで改質アスファルトルーフィングというのがあって、これだと20年に延びます。

最初は何も知らずカラールーフィングという4280円のものを買いました。あとで記事を読んでこのことがわかったので買い直しをしました。


貼りつける道具はタッカー。大きなホッチキスみたいなものです。以前持っていたものが壊れてしまったので、新たにハンマータッカーなるものを購入しました。叩けば打てる作業のしやすさが便利です。

ルーフィング施工でタッカーを使うときは直角に打つ。でないと雨水が侵入してくる。できたら垂木の上を打つ。たくさん打ちすぎると穴が増えて雨漏りの原因になる。かといって少なすぎてもはがれてしまう。いったいどうしたらいいの?という感じです。

天気予報で晴れはその日まで、翌日から雨模様。何としてもルーフィングまで終えないといけません。

基本のやり方はロールを屋根に上げて端から転がしながらカットしていくみたい。でも一本20キロものロールを梯子を使ってそのまま屋根に上げるのは至難の業。


そこで下で横サイズに合わせ先にカットしたものを一枚ずつ貼っていく段取りにしました。カット枚数11枚、これだけでもそれなりに時間が掛かります。

おまけに実際切るとロールが足らないことが判明!僕が屋根作業をしている間にヨメさんが追加購入でホームセンターに走ったり。材料不足、買い忘れはそれなりに起こります。時間ロスが出るのをわかっていることが肝心です。

どうやって貼っていくのかネットで調べます。特にルーフィングの上下と左右の重ね方です。こういうときは図解がほしいところ。自分なりに整理してみます。

作業開始。昼間は気温が上がって屋根上はさらに暑い。ハンマータッカーをデビューさせました。叩くだけで打てるこれは使えます。細かな動きができない高所作業には打ってつけ。

2枚ほど貼り終わると靴のゴムがルーフィングの上で溶けたような感じになっています。これは良くないと少し気温が下がってからの作業に切り替えました。

アスファルトは熱が上がると溶け出します。溶け出したものがタッカーやビスで打った穴をふさいでくれます。傷はつけない方がいいけど、そうなるようにできています。

気にある箇所は絆創膏のように上からルーフィングを貼ればOK。後でサポーターが教えてくれました。

その後、15時すぎに再開。あらかじめ横サイズに合わせてカットしていたのが功を奏しスムーズに貼ることができました。最終の1枚だけ縦寸を短めにして見事完了。ほっとしました。

水切り金物を取り付ける

金物の前に屋根の外周部を囲む破風板(はふいた)、鼻隠しというものがあります。木は切り口から水が入って腐敗していくのでそれを防止する材です。

通常は設置するのですが、必須というものでもないらしく、手間とコストを考えあわせ省略することにしました。


水切り金物とは、雨水が下地の材にあたって侵入させないように回していく金具のことをいいます。

付ける金物は軒先唐草とケラバの2種類。またまた出ました特殊用語。頭の中が混乱します。ルーフィングと水切り金物をどちらを先にどうやって付けていくのかに頭を悩ませました。

いつも通りネットでいろいろと検索。いくつかの情報からイメージづくりをしていきます。


まず軒先唐草から設置します。軒先唐草とは、屋根の軒先の先端に取り付けられる水切板金のことをいいます。

前日の雨で水が溜まったみたいで合板がふにゃふにゃになっています。あちゃ~という感じ。乾かして作業します。

さあ設置とはめてみたらいきなり問題が発覚!長さ3640ミリなので1820ミリの金物2つでいけると思っていたら重なり部分が足りません。

このままやるとつないだ箇所へ流れた水がたまってしまいます。縦の金物も重なり部分を加味していなかったので不足が出ます。

どうしよう・・・と思っていてもしょうがありません。すぐさま追加購入です。連休中、買えるのは群馬の大型ホームセンターしかありません。

急遽予定を変更、往復5時間かけて現地へ走りました。せっかく行くのだからとオープンセールで売っていた格安土台材を7本運搬しました。まったくセルフビルドは何が起こるかわかりません。

これでいける!と思いきや次なるカベに当たります。金物を継ぐと余分に出る長さが発生します。ということは金物自体をカットしないといけません。といっても金切りばさみでカットするような代物でもありません。

いつも通り検索しまくりましたが、これという記事がありません。YouTubeにも動画が見当たりません。ストレートカッターなる道具もあるみたいですが5万円前後とかなり高価。でもカットしないと作業ができない。どうしたものか・・・途方に暮れました。

サポーターの建築士に相談し、金切りばさみでやるしかないと決意、やってみました。すると何とか切れました。「案ずるよりも産むが易し」またまたこれです。

続いてケラバ。ケラバとは、切妻屋根や片流れ屋根で斜めになっている側の外壁から出ている部分を指します。このケラバの翻弄されました。継ぎ方がわからない、納めといって角の接合箇所の加工の仕方がわからない、とにかくわからないことだらけ。

最初の試練がケラバの継ぎ方。施工マニュアルに書いてあること、YouTube動画の内容、それぞれ違います。いろいろやって施工マニュアルのやり方がそこそこやりやすい結果に。みんなそれぞれに自己流でやっているみたい。お手本を見つけるのは難解な世界です。

次なる試練が「納め」の加工。納めとは金物と金物の接合部分をいいます。金切りばさみでカットします。YouTubeをみたら職人さんは簡単に切っている様子でしたが自分でやるとんでもなくうまくいきません。

YouTubeで屋根屋さんのやり方を見たり、マニュアルを何度もにらみながら見よう見まねで加工しました。


道具も多岐にわたります。例えば「つかみ箸」。鉄板加工で曲げるときに使います。ペンチで代用しようとしましたがうまくできないのでたまらず購入。

僕たちはこの後も何種類か建物をつくっていく計画があるのでいいのですが、一度しか使わないときはその都度買っていたら大変なことになりますね。


特に屋根最上部の端っこは上で作業するのは困難。なので地上で組み立てしようとしました。でもなかなかうまく納まりません。板金の加工も思ったように曲がらない。結局この工程だけで丸一日掛かってしまいました。


まさに板金屋さんプロの世界。後で知りましたが、日本の板金屋さんがもつ水除け技術は世界に誇るレベルだそうです。なるほどうなずけます。

翌日、格闘を再開。屋根最上部で恐怖と戦いながら何とか設置すると鉄板が浮いてしまっています。「えっ?なんで?」さらに納めの部分に足らずが出てしまいました。「せっかくつながったのに何でーーー」もう泣きそうです。

スキマに目を凝らしてみるとケラバの下地材に金物があたっているのが原因の様子。でももう一部釘で固定してしまっています。もう抜くのも困難な状況・・・

打ち手がなくなり途方に暮れました。最後の砦、サポーター建築士に電話し状況を説明しました。「浮いているのは良くないですねー。何とかしたいです」「ずっと作業やってますか?2時間ほど待ってもらえますか?行きますよ」と駆けつけてくれました。

到着するなりすぐさま屋根に上り、状況確認。自ら釘を抜いてくれ適切なアドバイス。下地材のあたっている部分をカット。仮ではめてみるとあれだけ何度やってもダメだったのがウソのようにうまくいきました。

おまけに屋根最上部の揺れが怖い話をすると筋交いを追加、揺れを抑えてくれました。ポイントは長めの筋交いにすること。筋交いって重要な役割を果たします。まさに救世主。神さま仏さま、建築士さま。絶対絶命のピンチを脱することができました。


後からきちんとリベンジ付け直して見事つながったときは思わず歓声を上げてしまいました。いやあ、ほんとうれしかった!

よろこびも束の間、翌日にはやっとこさつないだ金物と金物の間にスキマができて作り直し、やり直しの連続。


何とか全て付け終わりましたが、もうケラバは見たくないというところまで追い込まれました。

屋根材を貼る


いよいよ屋根材です。材料はアスファルトシングルにしました。アメリカなどで普及している材料です。自分で家を手直しするのが普通みたいです。いいですよね。


アスファルトシングル施工には専用の道具が必要です。専用のセメント(接着剤)、セメントを打つためのコーキングガン、専用の釘など。ひと通り揃えました。


作業開始、初っ端からつまずきました。マニュアルを見ると段々をつけて施工する的な説明があります。とても気になっていました。でもYouTubeをみてもやり方の解説はないし、そんな施工をしている人もいません。段々はなしでそのまま貼っていこうかと思いました。

やっぱり気になるので、最後はサポーター建築士に電話。するとこんな回答が・・・

「この施工は必須です。段差をつけないとつなぎ目が揃ってそこから雨漏りします。つなぎ部分を隠すのと釘を打つ位置を変えるためにやります。スターターの次からやってください」

「えっ!もうスターターの次を貼ってしまってました。どうしたらいいですか?」

「はがせますか?」驚きです。えっ!はがすの?さっき接着剤と釘を打ったところなのに。

「大丈夫です。セメントはそんな短時間で固まったりしませんから。アスファルトシングルがだめになっても釘抜きでお願いします」


そんな重大なことだったのか!やってみると何とかはがせました。でも早くわかって良かった!貼り進めていたら大変なことになってました。かなり時間ロスしましたがこれがセルフビルドですね。


アスファルトシングルは暑いとやわらかくなります。カットするには都合がいいのですが、アスファルトがすぐ溶け出してくっついてしまうので注意が必要です。直置きするのではなく、板の上などに置いた方がいいです。


屋根の上は動きづらくなります。最初は道具をそこらじゅうに広げていました。これでは行ったり来たりで大変。途中からカゴにまとめることにしました。


釘は一本一本手打ちしました。勾配があるのが原因なのか、釘はまっすぐ打つとうまく入っていきません。打ち損じは穴をつくるから良くないので結構神経を使いました。ちょっとしたコツですが、これがわかるまでは失敗を重ねました。

あと敷いたアスファルトシングルはかなり熱くなります。施工したのは5月でしたが昼間はお尻が熱くなりました。夏日の施工はきびしそうです。

ま、2日あれば全部できるだろう・・・とたかを括ってました。とんでもありません。それもそのはず、一枚貼っても15センチほどしか進まないのですから笑。


1日目は軌道に乗るまで要領を得なかったこともあり、全体のわずか1/4で終了。

途中ハシゴを使って重いアスファルトシングルを屋根に上げる往復もあるので思った以上に重労働。夕方には身体中痛く疲労困憊になりました。結局全部仕上げるのに3日半かかりました。

一番手間と時間が掛かるのは端のサイズを合わせるカット。厚みがあるので切りにくい。そういうのが切れるハサミがあるといいです。カッターナイフは素材に石が入っているので使いづらいです。

とにもかくにも、やっと屋根がはれました。これで苦労した雨養生から少し解放されます。何よりうれしい!

「これ、自分で貼ったんだあー」全て貼り終わって眺める景色は達成感満載。合板、ルーフィング、水切り金物、アスファルトシングル。屋根って大変なプロセスを経てできているんですね。

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