町と森を行き来するライフスタイル「通い森暮らし」。前回は「森と町、どっちがいいの?いえいえそうじゃなくて・・・」という話題でした。

今回は、小さな家をセルフビルドした話。自分には絶対できないよなあ・・・と思っていますよね?僕たちもド素人でした。実は意外にイケるんですよ・・・って話題です。
都会にいながらにして、森の暮らしをはじめていきたい・・・漠然と思い始めた人のお役に立てばうれしいです。
最初に母屋を建ててわかったこと

「この家を自分で建てたんですか?」
森プラスに来た人は、たいてい驚いた顔でそう訊いてきます。そのあと、ほぼ決まってこう続きます。
「…でも、素人だったんでしょ? それでもできるもんなんですか?」
はい、できます。しかも思っているよりずっとやれるんです。ただ、これは順番を間違えなければ・・・という話です。
実は、僕たちが最初にやったのは、母屋(住まい)のセルフビルド。基礎から軸組み工法で建てるという、まさに「ど真ん中ストレート」の挑戦でした。
もちろんプロの大工さんのようにはいきませんが、それでも、材料の運搬から木材加工、建て方まで、すべて手を動かしながら積み上げていきました。

ちなみに独学ではなく、近隣に住む知り合いの一級建築士に監修サポートしてもらいました。一軒の「住まい」ですからね^^
結果的には、最初に大きな山を越えたことで、その後の挑戦はずっと軽やかになった気がします。
でも、これから始める人にこの方法は正直おすすめしません(笑)。むしろ最初は、感触をつかむための小さなチャレンジから始めるのが得策です。
たとえば、
- 庭にデッキをつくってみる
- 簡単な小屋を建ててみる
- 焚き火場を自分の手でつくってみる
そんなところから、道具に慣れ、材を扱い、木の感覚を体で覚えていく。すると「あれ? 意外とやれるかも」という自信が湧いてくる。
そして次のチャレンジへ・・・。成長ステージアップしていけるサイクルがセルフビルドの魅力でもあります。
小屋づくりの第一歩は「土地を知ること」


今でこそこんな言い方をしていますが、僕たちも数年前までド素人。セルフビルドという言葉だけで引いていました^^;
セルフビルドというと、いきなり「フルで家一軒!」みたいな重圧感が漂ってますよね?
実際はもっと「できるところから」「愉しみながら」でいいんですよね。じゃあ、何から手をつけていけばいいんでしょう?
セルフビルドのスタートラインは、図面でも道具でもありません。まずはその土地に身を置き、風を感じ、日当たりや地形のクセを知ること。
僕らの場合、最初は荒れた森の整備、というか開拓からのスタートでした。地面をスコップで掘りながら、「このあたりは根が深いな」とか「水はけがいいな」なんて会話しつつ・・・。
実際に手と足を動かしながら、土地とコミュニケーションすることがセルフビルドの第一歩。そこから「ここに何を建てようか?」という発想が自然に生まれてくるのです。
暮らしを小さくするって、窮屈ではなくて自由を得ること


セルフビルドの魅力であり具体化の近道は、「ちいさな暮らし」を自分で形にできること。
「セルフビルド」っていうと大がかりに聞こえますよね?そうではないところがミソです。家が小さいといろいろ不足が出るんじゃないの?そんな思いも少しありました。
でも、実際にやってみて実感したのは、暮らしを小さくするほど自由になるということでした。
小さな家にすることで、ムダが減る。掃除がラク、暖まりやすく、光熱費も最小限。何より「必要なものを必要なだけ持つ」という発想に変わっていったのです。
モノを持つ前に「これは本当に必要?」と考える。持つことが目的じゃなく、暮らしに必要かどうかで選ぶ。ずっと使う視点で探す。
小さな暮らし環境をもつことで、自然と「ミニマル化志向=シンプル思考」につながっていきました。
一方で自分の森をもつということは、イコール大きな庭をもつことになります。何も誰も手を付けていないフィールドをイチから耕していける醍醐味は格別です。
「小さな家に大きな庭」。そこには驚くほどの解放感があって、「自由ってこういうことかもしれないな…」と心から思えるようになります。
ハーフビルドという選択肢もある


そうは言っても、「全部自分でやるのはちょっと不安」・・・それも自然な感覚だと思います。
そんな方には、ハーフビルドという方法があります。
- 構造や基礎といった建物にとって重要な部分はプロにお願いする
- 内装や外壁の仕上げ、家具などは自分で手をかける
という方法です。これなら、「自分の場所を自分で育てる」よろこびを感じつつ、無理なく、安心して暮らしをつくることができます。
思ったよりやれると感じた理由


なぜ、「思ったよりやれる」と感じられるのか?改めてその理由をまとめると次のようなポイントになります。
1. 小さく始められる
最初から住宅を建てなくてもいい。まずはデッキ、物置、焚き火場など暮らしの一部から始めてみる段取りでOKです。
小さな成功体験が積み上がると、それがやがて自信に変わっていきます。
2. 失敗しても大丈夫
多少歪んでも、寸法がまちがっても、それも「自作の味」。自分で考え、手を動かすことで得られる学びの方が何倍も価値があります。
その時は「あちゃ~」と思いますが、そもそも致命的でないかぎり、後を引くような失敗にはなりません。
3. 情報も道具も手に入りやすい
今はネットや動画でDIYの情報が豊富にあります。電動工具や材料も比較的手頃に手に入ります。
最初はどこで探せばいいかよくわかりませんが、調べること自体も楽しいのでじっくりやっていけばいいんですね。



僕たちは事業スタートというリミットがあったので、慌てながら探していきました(^^;
4. そして何より、愉しい
材料を探し、図面を見ながら、木を切り、組み立て、形になっていく。その過程が、自分の生き方そのものに重なっていくから不思議。このプロセスを知ると離れられなくなります。
途中でいろいろありますが、だから続けられるし、続けていたくなる。この世界ならではだと思います。
「手を動かす」ことで人生が動き出す


採寸して墨を打ち、丸のこでカット。柱を立てて枠にする。外壁をあてて、釘を打ち、壁が整っていく。こうした工程の中には、頭だけでは得られない手応えと達成感があります。
不安も、迷いも、木と向き合うことで次第にほどけていく。「これがやがて自分の居場所になっていくんだよね・・・」という静かな実感。
こうした感覚は、買った家ではなかなか得られない、「つくる暮らし」ならではの贈り物だと思います。
森の作業は、心との対話でもある


たとえば、土を掘っていたら、出るわ出るわ根との遭遇。地面に張り付いて手を突っ込んで根を切っていく。まさに大格闘劇ですね。
その掘り起こした土を三輪車で運んで、また整地。日常で土なんて触ったこともなかった自分がいつしか真っ白になって作業に没頭していた。
こんなことが日常茶飯事になる。その分、シンプルな時間の中で、心が整っていく感覚が生まれる。
森の暮らしにはそんな時間があふれています。
まとめ


セルフビルドは、スキルや経験が必要な難しいものに思われがちです。でも実際は、「やってみたい」という想いさえあれば、意外と誰でも踏み出せる世界です。
欧米には家を自分の手でメンテナンスしながら育てていく文化があるみたい。とても共感します。
自分のまわりだけでもいいのでそんな文化を根付かせていきたいという想いが芽生えていきました。
セルフビルドは、建てるというよりも「暮らしをつくるプロセスそのもの」。
いきなり大きな建物を建てなくていい。できそうな小さなものから。
その一歩一歩が、自分の暮らしを、そして人生を動かしていきます。単なるDIY指南ではなく「生き方としてのセルフビルド」を一緒に実践していく・・・。僕たちが描く方向性です。
「やれるかな?」より「やってみたいかも?」を頼りに。あなたも、手を動かす森の時間を始めてみませんか?