町と森を行き来するライフスタイル「通い森暮らし」。前回は「森づくりから得られた贈り物」という話題でした。

今回は、森と町、どっちがいいの?いえいえ両方あるからいいんだよ・・・という話。
都会にいながらにして、森の暮らしをはじめていきたい・・・漠然と思い始めた人のお役に立てばうれしいです。
「森を拠点に働き暮らす」へのこだわり

「森に暮らしてるんですか?」と聞かれるたび、少し言葉を選びます。というかこだわりがあります。
「いえ、森を拠点に働きながら暮らしています・・・」そんなふうに答えることが多いです。
たしかに、セルフビルドした無垢の家があります。森の手入れも施設づくりも焚き火の火おこしも日常です。
でも、そこにずっと住んでいるわけじゃない。森の家とフィールドを拠点としながら活動をしています。
講師をするため、打ち合わせで人に会うため、出張で出かけるため、時には町へ行きます。
そしてまた森に戻る。そんな“行ったり来たり”の暮らしだったりするわけです。
二拠点とは分けることではなく「つなぐ」こと

多拠点とか二地域居住とか、最近はよく耳にするようになりました。
でも、僕が大事にしているのは、単に「住む場所を二つに分ける」ということじゃなくて、働く場所を固定化することなく自分の暮らしをつくるという感覚です。
森には、静けさや手仕事のよろこびがある。町には、人との出会いや刺激がある。
どちらにも、それぞれのリズムと意味があって、どちらかを選ぶ必要なんて、本当はなかったんですよね。
“どっちか”から、“どっちも”へ

多くの人は、「どっちか」を選ばなきゃいけないと思っていますよね。
会社員か独立か。街に住むか田舎に移住するか。安定かやりがいか・・・。
でも今ははっきり言えます。選択肢は、もっと自由でいい。
たとえば、町で働いて、週末は森に通う。森で暮らしを育てながら、必要なときは都会に出る。そんな“どっちも”の暮らし方が今は可能になってきています。
それは「どっちつかず」ではなくて、「自分にとってちょうどいいバランスを自分でつくる」ってこと。
その自由が人生の幅や見える景色を広げ、毎日をぐっとおもしろくしてくれるんです。
行き来する中で育つもの

森に通っていると面白いもので、町の風景や人の営みが以前よりも新鮮に感じられることがあります。
一方で、町にいるときも「あの斜面、今ごろ草伸びてるだろうなあ」とか「このDIYのアイデア、森で試してみよう」なんて、自然と“森モード”が頭をよぎる。
それってつまり、どちらかに住んでいるんじゃなくて、自分の中に“町の自分”と“森の自分”が共存しているということなんですよね。
一つの軸で生きるのではなく、複数の軸をもって生きる。それは、働き方にも、人間関係にも、心の余白にも、きっといい影響を与えてくれます。
「選べる」が「生きている実感」につながる

この二拠点の暮らしは、最初からすべてうまくいったわけではありません。移動は一見手間かもしれないし、家の手入れも倍になります。それぞれの拠点で必要な人間関係や段取りもあります。
でも、だからこそ「自分で選んでいる」という実感が確かにあります。
移動だって手間だと考えればネガティブな話。でもそうではなくいつも新鮮な気持ちでいられる手段と考えればポジティブな話になります。
今日は町にいる、森にいる。この週末は、誰と過ごしたいか。どんなふうに手を動かしたいか。
その選ぶプロセスそのものが「自分の人生を自分の手でデザインしている」という感覚につながっているのです。
まとめ

僕たちは、気づけば「正解さがし」の社会に生きてきました。“どっちが正しいか”とか“これが王道だ”とか。
でも、森と町の両方を往復する暮らしを通して、そんな問いそのものが、もういらないんじゃないかと思うようになりました。
自分が気持ちよくいられる場所はどこか。自分にとって心地いい暮らしのリズムはどんなものか。
それを試しながら、変えながら、生きていける。選べるって、なんて自由で、なんて面白いんだろう。
これからも、森と町、どちらにも軸足を置きながら、自分の“ちょうどよさ”を探していこうと思います。