my forest,my home。自分の森で自分の家をつくる。ど素人アラカン夫婦二人が一級建築士のサポートを受けながら、森の中の6坪ハウスをDIYするプロセスを工程ごとにまとめた記録です。
家づくり外まわり最後の工程は外壁張り。これで外観が決めるといっても過言ではない大事な作業。
どんな張り方をするか、材は何にするか、色はどうする・・・いろいろ思案しながら。ここまではたのしい時間。
ところが実際作業を始めるととんでもないプロセスが待ち受けていました。外壁作業は、相当な時間と手間が掛かります。
本記事では、そんな外壁張りセルフビルドの作業プロセスをまとめてみました。
外壁材選び
外壁は当初の図面では横貼りでできていました。いろいろな建物を研究していくうちに縦貼りの方がいいと思うようになりました。
次に色合いです。ヨメさんは最初の頃、ブラック推しでした。その後話し合ってグレーがいいんじゃない?ということでグレー系に。
そんな感じでサポーター建築士へ相談しました。するとカラマツの縦貼りはどうかという提案です。
塗装することなく、木そのままの風合いを生かし、経年の変化をたのしんでいくというもの。木そのものを生かすこと、自然なながれというところに共感、この線でいくことにしました。
貼り方は材と材の継ぎ目に板をかぶせる方式があります。ただこれだと野暮ったいイメージがあります。
もう一つの方法が実(さね)をつけて差し込む本実(ほんざね)というやり方。こちらは表に釘も何も出ないのでスッキリ仕上がります。材に加工し、さらに釘の打ち方に技術が要ります。
もう一つが「相じゃくり」という方式。お互いの板材の厚さを半分ずつを削り取って相互に張りあわせるやり方です。
これまでお付き合いのある製材屋さんに加工ができるか相談に行きました。ところがあまりいい表情をしてくれません。
「カラマツは暴れるから施工が難しいよ、黒ずんでくるよ」といったニュアンス。心配してくれているのはありがたいですが、どうにも頼める感じではありません。
再度サポーター建築士に相談し、知り合いの別の製材屋さんを紹介してもらいました。ここはカラマツ専門にやっていて精度が高材料を出してくれるそうです。
少々値が上がりましたが外観は妥協できません。お願いすることにしました。
裏面にある2本の切り込みは割れを防止するもの。柱に背割りと同じ役割をします。
防虫網の設置
木造住宅をつくるとき注意しないといけないのが虫の侵入です。外壁はまさにそれにあたります。外壁と胴縁のスキマから虫が入ってきて、通行口から胴縁内部へと進んでしまう可能性があります。
虫の侵入を防ぐために、胴縁の最上部と最下部に網を設置します。ステンレスの網を買ってきて間に押し込んでいくといった方法もありますが、手間と時間が掛かりそうです。
ヨメさんがまたまた探してきました。防虫網(城東テクノ)という代物。これだけ胴縁にあてて留めるだけでできそうです。
「ユニークな建材で、長持ち住まいをささえます」というコピーがいいですね。
土台下、屋根との接点部分の胴縁と胴縁の間につくった空気が抜ける部分に一つひとつ付けていきます。結構、細かくて丹念な作業です。
実際付けてみてわかったのですが、屋根やサッシ下部分には空間ができて、そこには虫が入ってきてしまうということ。全部仕上げた後で網戸の網を詰めていくといった作業が必要になりそうです。
いずれにしても虫の侵入を100%遮断することは不可能。場面によって彼らとの共生も視野に入れないといけません。それが森の暮らしです。
もう一つわかったのが、購入する部材の量が多すぎたこと。ふさぐのはスキマ部分だけなので部材を切って使えばOKでした。1セットで1800ミリのものが20本も入っているのでそれで十分です。
丸々1本使うものと思って2セット買ってしまいました。ま、他で使えるから良しとして・・・。
作業スタート
あらかじめ外壁材両端の加工を考える
左から右へ右へと張っていくことになります。外壁板の横幅は14センチ。一面でちょうどはまるわけがありません。
ということは、一面で何枚張ることになって、両端のサイズがどうなるかを考えてあらかじめ加工しておかないといけません。
頭の中がこんがらがるややこしい計算をしつつ、両端のサイズイメージを割り出します。
起点と角の合わせ方を決める
まず貼り始めの起点を決めます。建物の一番高いところに足場があるのでそこから掛かることにしました。角の部分を両側から板がピタッと合わさることできれいに仕上がります。
ここで重要な点。手前の板が出っ張る寸法にちょうど合わせるとはみ出してしまう場合があります。なぜかというと、板一枚一枚には反りや歪みがあるからです。その分を読んで付けていかないといけません。
次に屋根や母屋との接点部分は形状に合わせ欠きこんでいかないといけません。どんな欠きこみをしないといけないのか?高所での採寸には難儀しました。
頭の中で考えていてもどういう形にしたらいいかがイメージ湧きません。紙をあてて実際に型を取ってみることにしました。これまた高所でびくびく作業。
いろいろとやって随所に欠きこみをしないといけないことが判明。サクッと貼れると思いきや、またまた作業に手間取ります。
下半分は欠きこみこそないものの、足場がじゃまして釘が打てない場所が続出!まずは上半分を全部終わらせて足場を撤去しないことには進みません。
これまで足場に助けられてきたのにこんな足止めをくらうとは・・・ほんといろいろあります。
繊細な真鍮釘
板を留めるのに真鍮のスクリュー釘を採用しました。理由は仕上がりがきれいなこと、経年ととも味が出てくることです。
真鍮は材質がやわらかくできています。少し気を抜くと斜めに入ってしまい、修正しようとすると簡単に曲がってしまいます。
一度曲がって入ると元に戻すのが大変。スクリュータイプなので釘抜きも容易ではありません。抜けずに頭が切れてしまうことも。
仕上がりが悪くならないように、一つひとつ気を配りながら打っていきました。
当初45ミリサイズのもので作業していたのですが、太くてなかなか入っていきません。少し短い38ミリにすると太さも細くなり作業効率がアップ。
下穴きりを何度も買い替えながら手打ちしていきました。
どう付けていくかの悩み時間プラス足場を上がったり下りたりの往復もあって、丸2日でやっとここまでという滑り出しになりました。
実は、この後が大変なことになります。一枚一枚張れば張るほどできるだけ一直線になるように打ちたい。
一つひとつ水平器をあてて位置を決める。インパクトで下穴をあける。釘を打ち込んでいく。やわらかい真鍮釘は途中で曲がってしまうので慎重に打つ。
こんな作業の繰り返し。最終2000本は優に超える本数を手打ち。時間が掛かる作業なわけです。
高所の加工、細工、はめ込み
外壁張りで苦労したのが高所のはめ込み作業。
例えば、片流れ屋根の先端部分はいびつな形でスキマが残ります。ここへ板をはめ込むわけですが、なんせ地上5メートルの場所、おまけに相手は狭い箇所。恐怖と緊張感の中で時間だけが過ぎていきます。
サイズ修正で何度も足場を上がり降りしながらやっとはめ込んでみると、胴縁が出っ張っていて凸凹になってしまう。やむを得ずその場でカッターナイフであたる部分を削りとります。
母屋のところは全てこんな感じ。とかいっていると手間暇かかるわけです。
スキマ埋めコーキング作業
意外なところで手間と時間が掛かったのがスキマを埋める作業。コーキングを利用しました。
できるだけ目立たない色でアイボリーを選びましたがう~ん、イマイチという感じ。木材と同化する色つくってほしいですよね。
板の上にはみ出すと仕上がりがきれいにならないのでマスキングテープを貼っての作業。しかも高所なので時間を食いました。
やり始めるとこうした細かい作業が発生します。なかなか時間が読めない理由です。
コーキングの色にはクリアという種類があります。使ってみましたがこれだと多少ましかもしれません。
角で凸凹になってしまったところのスキマ、サッシまわりのカットでできたスキマなども全てコーキングで埋めていきます。サッシまわりはサッシ色のブラックにしました。
理由は虫の侵入を防ぐためです。外壁材は木なので雨水はどうやっても侵入しますが、下に貼ってあるタイベックが防水の役割を果たしてくれます。
上下の板合わせが難所
さらに手間取ったのが上下の板を合わせる部分。全長4メートルを超える箇所は上と下で板を張り合わせます。
きちんと採寸してもなぜかスキマが2ミリ程度できる。この繰り返しになりました。「何でだろう?」「何で?」とそのつど考えましたが原因がわかりません。
考え止まっていると時間ばかり過ぎていきます。水平器でとりあえず垂直をとりながら進めていきました。いったい何だったのか今でも不明です。
おまけに微妙にズレがある箇所は細かい加工で合わせていきます。予想を超える手間に進行は少しずつの連続になります。
何度もトライしていると、なかにはピタッといくところも。ヨメさん作、素晴らしいのひと言。
細部に予想以上に手間取る
上下の合わせに数ミリのズレが出る。足場を降りる。カットする。足場に上がる。また少し合わない。足場を降りてカット調整する・・・。
さあやっとはめ込めた!思ったら何かがあたる、よく見るとサッシのビスがじゃまをしていた。中をのぞきこみながらカッターで削る・・・。こんなことを何度繰り返したことでしょう。
素人がやっているのだから当たり前。とはいえ予想以上の手間と時間に本当に泣かされました。
面ごとに貼っていく
どこまでをひと区切りにするのか。面ごと。最初の貼りだしは角がきれいに重なるようにあらかじめ数センチ出しておくこと。
あと、貼り終わりの板が端数になって留められなくならないようにしないといけません。最初は貼っていった中ほどで調整・・・
と思っていたのですが、外壁材に板と板をはめ込むところに加工がしてあります。相じゃくりといいます。
中ほどで調整するとなると、相じゃくりをカットしないといけません。もしカットすると継ぎ目を合わせる難易度が一気に上がってしまいます。
これはやめておこうと、両端の板で調整することにしました。幅の全寸を測って、外壁材1枚あたり14センチで割って、必要枚数を出し、残ったサイズを両側に割り付けるという計算。算数が苦手ですが、そんな感じで決めました。
電気の配線が出ているところ、シャワーユニットのダクトが出ているところなどは丸く切り取ります。
電気配管はたまたま持っていったドリル径とほぼ合っていたので、穴を開けてやすりで微調整したらそこそこの仕上がりになりました。こういうのがうまくいくとうれしいですね。
唐松の色の変化に気づく
外壁を張り付けるタイミングにズレが出たため、先に張ったものとの色の違いがよくわかりました。唐松は経年変化がたのしめる。その一端を感じるひとときでした。
これからの長い年月がさらにたのしみになりました。
最後の板埋め
いろいろあって何とか全て張り終わりました。最後の最後に残った屋根との角が難所でした。大きな金物のビスが飛び出ていて、左右の板の高さにズレがあります。
裏をのこぎり、ノミ、彫刻刀で掘ったり、スキマをうめる細い材をつくったり・・・結局2時間近く掛かりました。
晴れて堂々の完成。うれしくなって四面を眺めてみる。しばし感慨に深りました。
外壁張りのまとめ
こうしてすったもんだしながら全面張り終えたときは圧巻でした。
所用があってなかなか現場に入れないスケジュールも影響したとはいえ、外壁張りに3ヶ月近くも要してしまいました。
足場を組んで撤去する作業の繰り返し、高所作業でスピード低下、足場の上がり降りなど振り返ると物理的に時間が掛かる要素が重なり合っています。
順番に張っていくと上下の寸法が合わない、足場があって釘が打てない、角の部分の加工はどうしたらいいかわからないなど試行錯誤の連続。
スキマ埋めのコーキングと事前に行うマスキングテープ貼りなど予期せぬことも発生。思ったようには進みません。
遅れているからと、焦ってこのくらいでいいだろうとやっちゃうと取り返しのつかない事態に。その復旧で余分な手間と時間が掛かります。
これでやっと外回りの作業は完了、次回からいよいよ家の中の施工に入っていきます。
セルフビルドはスケジュールには余裕をもって、じっくり確実に取り組むことをおすすめします。