自分で小さな家を建てる|柱と桁の組み立て編|森の暮らしづくりレポート③

my forest,my home。自分の森で自分の家をつくる。ど素人アラカン夫婦二人が一級建築士のサポートを受けながら、森の中の6坪ハウスをDIYするプロセスを工程ごとにまとめた記録です。

土台ができたら、いよいよ上物。柱と桁をつくっていきます。家づくりには、在来工法と枠組み工法があります。僕たちの家は在来工法をベースにやってきました。

在来工法では、土台をつくったら、その上に柱を立て、柱の上に桁を載せていくという流れになります。その都度安定が必要なので継ぎ手の加工が必要になります。まさに大工仕事という感じです。

本記事では、森の中で6坪の小さな家を自分でつくる柱と桁組みまでのプロセスを実体験ベースでまとめました。

目次

建築材の調達

土台までは種類も限られているのでホームセンターで何とかなりました。ここから以降はあらゆる建築材が必要になります。

やっぱり良いのは地元の製材屋さんと知り合いになること。ネットでいくつか検索しましたが小さな町なのでそれっぽいところがありません。

とりあえず車で見て回ろうと数件行きました。誰もいない事務所、明らかに入るのをためらうようなところ、いろいろです。

そんな中、そこそこの製材屋さんがあったので事務所を訪れると不在。作業現場かな?と行ってみるとおばあさんがいました。責任者っぽいです。

「うちは建築材はやってないのよ。ごめんねー。近くだったらあそこに行ってみたらいいよ」と一軒紹介してくれました。田舎の人は親切です。

その足で向かうとネットには出ていない製材屋さんが。作業中だったので現場に行きました。作業員らしき人が二人。大きな機械音で話が聞こえません。

「個人でもやってもらえますか?」「まず見積りをお願いしたいです」

「自分で家だって?」「図面はあるの?」「どんな家なの?」「それだとこうしないと難しいよ」「材はこれがいい」いろいろと話が出てきます。脱線しまくりです。

最終どんな材が何本要るかの一覧を出さないと見積りできないみたいで、建築士に相談することに。その日は引き下がり後日再訪。結局建築士に出向いてもらわないと話になりませんでした。

それ以降のいつ入ってくるのは不明瞭、予定が組めず苦労しました。でも何度も顔を合わすと良い人柄がわかり、今もお付き合いしています。納品時にはひのきを混ぜてくれるなど便宜も図ってくれました。

地元の職人さん系は見つけるのと関係をつくるまでに時間が掛かります。その分読んで準備をしていきましょう。

柱のカット

製材屋さんから届いた柱を切っていきます。納品時は通常4メートルか3メートルです。これを柱の寸法に合わせていきます。

数ミリの誤差が組み立てた時には命取りになります。一回勝負なので緊張しながら作業を進めていきました。

カットの際の注意点は2点。「切断面を直角にすること」と「丸のこの使い方」です。

製材屋さんで切り出したものやホームセンターの材でも直角になっていない場合があります。差し金で確認して直角になっていないときは数ミリ切って修正していきます。

丸のこは刃自体に1ミリ強の幅があります。これを加味して切らないと寸法が長くなったり短くなったりします。

また105角材だと丸のこで一度に切れません。切った線に沿って90度ずつ手前に材を回しながら3面切っていきます。スムーズに作業を進めるコツです。

最初の頃はわからないので材の上下から丸のこを入れていました。このやり方だと上下で切断面のズレが出てしまいます。

ズレが出るとカンナで削って微調整する余計な作業が出たり、最悪の場合寸法が合わなくボツということもあります。土台の束柱加工では何度も失敗しました。

雨よけ養生と材の保管


夜から朝にかけて、そして作業日から作業日の間に雨天日があります。建築そのものではないですがこの雨よけ養生が結構手間でした。

平らな箇所をつくるとそこに雨が溜まってしまいます。できるだけ雨が流れるように斜めに張るのがコツです。そのためには中に入れる材の積み方に工夫が要ります。

冬季など気温差があるときは、ブルーシートだけだと結露が出て濡れてしまいます。桁材や合板にも一部カビが出てしまいました。ビニールシートをかけてその上にブルーシートという二重養生をしました。

あと、材を合板の上にそのまま置いて保管すると、合板がカビてしまいます。何でカビるんだろう?と気になってました。

使った材は天然乾燥で桁など材そのものがまだ乾き切っていないため、密着部分が濡れてしまうのが原因。密着防止のため、材と合板の間に枕になる板を置いて空間をつくってください。

養生は作業のつど外して掛けての繰り返しになるとても手間の掛かる作業。できるだけ期間をおかずに進められた方がいいです。

事前の墨付けと刻み


在来工法は柱の上に桁を載せていく流れで進んでいきます。柱と桁の連結部には継ぎ手を作ってつなげます。

継ぎ手を作ることを刻みといいます。刻む作業に入る前に墨付けといって、どこを刻むのか前もって線を引きます。


墨付けを適当にやるとサイズに誤差が出てはまらなくなるなど後で困ることになります。慎重にしっかりやらないといけません。素人DIYで陥りがちな失敗ですよね。

言葉で書くとこれだけのことですが、ここまででもかなり難しい。柱と桁のどこがつながってどう継ぐのか?考えれば考えるほど頭がこんがらがってきます。

現場で考えながら作業しているとぐちゃぐちゃになったので、いったん持ち帰って考え直すことにしました。


それでも混乱するので、端材で簡単な模型を作りました。やはり立体的にしないとイメージが湧きません。


もちろん大前提ですが、兎にも角にもきちっとした図面なしで材の加工は成り立ちません。

梁が載る刻みは横幅が広くならないように注意が必要です。丸のこの刃の分、広く切ってブカブカになったところが出てしまいました。

差し金


事前加工には寸法取りが命になります。その際使うのが差し金。材料との直角をとりながら墨を付けていくのに必須です。最初はどうあてるのかわかりませんでした。だんだん使い慣れると直角をとるには最高の道具だとわかるようになりました。


通常は50センチ強のワンサイズですが、個人的には30センチサイズの小さなものもあった方が扱いやすいと思います。ちなみに安いのも魅力です。

「差し金一本あれば家が建つ」と建築業界では言われるほどのも道具。まだまだ使い切れていませんが深さ加減だけ体験しました。

鑿(のみ)


刻みでメインになる道具が鑿(のみ)です。継ぎ手が正確かつきれいに仕上がるか否かは鑿の使い方で決まります。

平らな面を使う、斜めにあてる、繊維を切るなどいくつかのポイントがあります。また幅が広い方がうまく削れるような気がします。やりながらですがコツが少しつかめていきます。

仕上げで水平に削るときは取手が長く、頭の重さが重い方が使いやすいなど最後の最後で会得しました。本当に奥が深い道具です。

丸のことドリル

最初はのみを金槌でコンコン叩いて継ぎ手を掘っていました。でもこの方法だと余計な力が入ってしまいきれいにできません。時間も掛かります。

YouTubeを何本かみて、鑿の前に丸のことドリルを使うやり方を知りました。


まず丸のこで何本も切り込みを入れる、鑿でとるとは両手を使って奥まで入れて倒すようにする、先にドリルで穴を開けてその穴へ向けて丸のこを入れていく・・・

文字で書くと何を言っているのかわかりにくいですが、こうしたちょっとしたコツを覚えるときれいに仕上がり、作業効率が上がります。失敗に失敗を重ね、何度も試行錯誤してわかりました。

腰掛け鎌継ぎ


最大の難関は家の横を左右に渡す7メートル強の桁づくりです。180×105の角材と105×105の角材、4メートルと3メートル強2本を接合してつくります。

2本の継ぎ手になるところには強度が必要です。もともと一本の木であってほしいという箇所。それなりの加工が必要です。そこで特殊な加工をします。

継ぎ手部分を加味せずに寸法カットを間違うと短くなってしまうので慎重に墨付け。あとはひたすら丸のこ、ドリル、のみで掘っていきます。

柱と桁を立ち上げる

壁をつくるには、床の上の平面で組み立ていくのがベスト。でもこれをやるとできた壁を立ち上げるのに相当な力が要ります。アラカンの夫婦二人では手に負えそうにありません。

そこで、合板を貼らずに柱の枠だけつくって後から合板を貼るか、柱だけ立てて合板を中柱を立てて合板を貼っていくか、いくつかの方法を試すことにしました。

家前面の桁を起こす

組み立て工程の中で最重量・最難関のステップです。ここだけはアラカン夫婦二人だけでは手に負えません。サポートしてくれている建築士にも手伝ってもらうことにしました。

進め方として、桁が立つようにあらかじめ柱3本を金物で取り付けておきます。次に伐採で使うチルホールと滑車で桁をワイヤーで牽引します。

チルホールと人力の合わせ技


あとはチルホールを引きながら、大人二人で支え合って起こしていきます。このとき柱の着地面が滑って地面に落ちないように土台に材を打っておくのがポイントです。

起こし始めるといきなり柱は滑っていきました。事前の策が役立ちました。二人でバランスを取りながら少しずつ起こすと何とか立ち上がりました。「やった!立った!」思わず顔がほころんだ瞬間です。

筋交いを入れる


そのままでは不安定なので、四隅を組み立てるまで筋交いで仮留めします。筋交いとは、柱と柱の間に斜めに入れて建築物や足場の構造を補強するものを言います。

順追って四面立てる

自立しやすいように家向かって右面を立てます。ここは大人二人で持ち上げて立ち上がりました。同じ要領で左面、最後に家の後面はチルホール方式で立てる。こうして四面の柱と桁が立ち上がりました。

梁を上部から差し込む

縦面と横面の間に入る梁を差し込みます。梁がはまれば前後の枠組みが固定します。事前の刻みがずれているとはまらない事態になります。

おかげさまで全て一発で収まりました。梁と桁が広がらないように専用のビス止め羽子板で結束して完了です。

傍目に見ていると何でこんなに時間が掛かるの?という感じだと思います。でも実際やってみると緻密、慎重、確実な作業の連続。合わせてみたらサイズずれていた、はまらないといったことの連続。素人だとその都度どうすればいいかわからない場面に出くわします。

そんな表には出てこない作業を行ったり来たり。柱桁が立ったときは長いトンネルを抜けた気持ちになりました。

残りの柱を差し込む

四面の枠ができたところで間に立つ柱を差し込んでいきます。ちょうど入るもの、木槌を使って入れるもの、ちょっと短いもの。短いものはどうしたらいいかです。

そして最後の面で柱を差し込もうとしたら長すぎて入りません。理由は不明。僕は安直、はみ出している部分をカットするしかないと考えました。

ここでヨメさんの納得がいきません。寸法通りにカットしているのに入らないはずがないと。高さなど何度も確認すると、腰掛け鎌継ぎでつないでいる部分がわずかに曲がっているのが原因とわかりました。

継ぎ手部分を木槌で叩いて調整すると高さが正常になり、入らなかった柱がうまく入りました。あのまま安易にカットしていたら大変なロスになっていたわけです。ヨメさんにリスペクト。

こんな感じになるので、桁と柱が微妙に合わないときは、継ぎ手部分がまっすぐか否かを確認することが大切になります。

結局、サイズは正しく切れているのに5ミリ程度短くなってしまう柱が一本残ってしまい、やむなく買い足して入れ替えました。無念!おそらく継ぎ手部分が原因と思われます。

ところが後日談。この後2階部分をつくっていると、5ミリが下がりました。そう上から荷重で変化するんですね。

なのでいったん留めた柱を抜いて、柱が立つ場所の上に人が立って、一番下がったところで柱を留めるという奥の手を打ちます。

こうして最終は2ミリ程度のズレにおさめることができました。

補強金物で留める


本格的な大工作業なら、ほぞなど穴を掘って材を差し込む流れになりますが、素人なので時間が掛かるしうまくいく保証もありません。

代替え方法として、四隅をはじめ、柱と桁のつなぎ目には補強金物を使います。建築基準に見合った専門メーカーの金物を選び付けていきます。

強度をいろはにほへとで表示するようになっていて、設置箇所によって違う種類のものを付けていきました。


建築金物の世界もそこだけで奥深く、興味深い作業の連続でした。

全体のゆがみ調整


全て組み上がったら、基準になる前後左右の直角がとれているかを最終確認します。縦辺と横辺に下げ振りを付けて調整します。


もうここまでくると人力ではびくともしません。ワイヤーをチルホールで引きながらちょうどいい場所でストップ、筋交いを付けて完了です。

失敗!次ステップまでの雨養生


きれいに立ったはいいけど、このままでは床の合板、柱、桁、梁が雨で濡れてしまいます。全体を雨から逃したい!どうしたものか・・・

思案に思案を重ね、柱、桁、梁にはポリエチレンシートを一本一本巻くことにしました。これが思った以上に手間が掛かる大変な作業。一日半にも及びました。

これで万全!とほっとしたのも束の間、雨天の日を含んだ1週間後に現場に行くと目の前に泣きそうになる光景が。何とシートの中が結露してカビが生えているではないですか・・・

えっーーー!とか言ってる場合ではありません。すぐに全部はがす作業へ。一日半必死でやった作業は結局無駄骨になりました。考えてみれば当たり前ですよね。密封状態にしたら空気は抜けないし結露します。

後でゆっくり考えればわかることもその場でやってしまう。こんな失敗の積み重ねが素人にはあります。でもわずか1週間足らずでこうなってしまうとは・・・。ま、何とかなるでしょうで次ステップへ向かいました。

雨養生はその日の作業が終わったら毎回やらないといけません。作業それ自体に手間が掛かるので時間も必要です。本作業でないところで時間を割かれるのはつらいですよね。

作業工程の間が空いてしまうような場合はその間の雨養生をどうするかがめちゃくちゃ重要です。二拠点で家づくりといったようなケースには必ず遭遇します。

壁下材の合板入手

枠組みができると屋根をつくり、その後壁を貼っていきます。これまで調達に時間が掛かったので材のみ入手します。

設計上、縦が2420ミリ必要になります。通常ホームセンターで販売しているものは1820×910ミリのサイズ、それより縦長です。

建築材はもともと尺で計算されるそうで、910×1820は三六尺、910×2420は三八尺と呼ばれるサイズ。この三八尺が市販でないんですね。

ネットでも探しましたが、取り扱いがあってもごく少数、価格も割高。それなりの枚数が要るので運賃がばかになりません。

他の材でお世話になる製材屋さんつながりで紹介してもらうしかないかなあと思いながら、さらに探していると、「ここはどう?」とヨメさんが見つけました。

「DIYに役立つ木材から、大工さんも驚きの商品群が自慢です!柱1本から家1軒分の木材まで、揃わないものはない!」このコピーに惹かれました。

以前、近くを通りかかったことがあり、小1時間掛かりますが行くしか選択肢はありません。早速車を走らせました。


このでっかい看板が目印。到着して外の売り場を見ると、他のホームセンターとは違う種類を置いています。掘り出しものもあってびっくり価格。


合板売り場に行きました。ありました、ありました!2430サイズ。価格もそれなりです。いやあ、探してみるものです。それから建築材選びは、一度ここを見に来ることにしました。

ほぼこれにしようかと思いつつ、一度製材屋さんにもきいてみました。すると付き合いはないけど、ここに訊いてみたら?というところを教えてくれました。

ネットで探して出てきていたそこそこ大きな会社です。ダメ元で行ってみると小売も大丈夫とのこと。見積りを頼みました。受付の女性がやりとりするんですね。

その日のうちに返事があり、4000円強とホームセンターより割高みたい。でももう一つ大きな三十サイズなら3300円になるとの話。910×3030ということですね。

カットが必要ですが、小分けして配達してくれる、使うまで取り置きしてくれる、端材が別の用途で使えるなどを考え合わせ、最終これに決めました。

建築材の調達ルート探しはとても重要になります。

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