二拠点居住で仕事をするというスタイルになって丸6年が過ぎました。年齢でいうと54歳からスタート、現在還暦です。
僕の場合は、二拠点生活がしたくて始めたのではありません。自分が描くシゴトをカタチにしたい。それにはフィールドが要る。その結果が森だったという感じ。
やりたいシゴトが先にあって、それをやるなら元々やっていたシゴトも回せるようにしたい。そんな思いからやっている働き方です。
この記事では、この6年間の実体験で感じたこと、得たことを紹介しています。
「都会を離れて自然の中で暮らしていきたい」「定年後へ向け、二拠点生活を始めていきたい」「第二の人生は今までとは違ったライフスタイルをつくっていきたい」
「人生100年時代へ向け、自分らしいセカンドライフをつくっていきたい」「でもまだ考え始めたばかりで漠然として右も左もわからない」
そんな人のお役に立てば幸いです。参考にしてみてください。
二拠点居住とは
平日は都会、週末は地方というふうに二つの拠点を持って生活することです。新型コロナ禍も影響して、都会から地方移住や二拠点生活が広がってきています。
全国二地域居住等促進協議会が設立され、行政も積極的に後押しし始めました。社会的にも認知されてきた感があります。
多様な価値・魅力を持ち、持続可能な地域の形成を目指すためには、地域づくりの担い手となる人材の確保を図る必要があります。 しかし、国全体で人口が減少する中、すべての地域で「定住人口」を増やすことはできません。そこでこれからは、都市住民が農山漁村などの地域にも同時に生活拠点を持つ「二地域居住」などの多様なライフスタイルの視点を持ち、地域への人の誘致・移動を図ることが必要となります。 国土交通省では、「二地域居住」の推進を図るための情報発信等を行っております。(国土交通省WEBより引用)
ただ、週末リフレッシュするために平日は一生懸命働くといった従来型の発想では広がりがありません。
時間と場所にとらわれることなく働き、暮らしていくこと。そうした生活からライフスタイルに新たな可能性をつくるための第一歩と実感しています。
場所をどうするか
まず場所をどうするかというところから始まりますね。どうやって見つけたらいいのか?
まずはネットで検索するところからになります。 自宅からの通う距離を考えて大体この辺りというエリアを決めます。
実はこの距離が重要です。そもそも通いやすくないと二拠点と機能しないからです。
自宅から遠い場所だと通うのが大変になります。また毎回高速道路を使わないといけないというのもコスト高で続きません。
下道利用で足繁く通える範囲で決められたらベスト。ちなみに僕たちは信州小諸を拠点にしています。
下道で5時間強。えっ?って思うかもしれません。でも慣れるとこれくらいなら負担になりません。
以前埼玉の山手に拠点を構えていた頃は下道で2時間弱。このくらいならベストですね。
検索する際のコツは、大手不動産サイトを探すのではなく、地元の不動産屋のホームページを見つけてそこで物件を探すという方法です。
大手だとありきたりな情報しか載っていません。掘り出しものを探すにはより現地に近づくことです。
移住や二拠点生活に積極的な自治体もあります。補助金などの制度もあったりしますので、そうしたエリアで選んでいくというのもありでしょう。
もう一つの方法は人づてです。ネットには載っていない情報は現地の人に聞くしかありません。
何度か足を運んでいく中で、地元の人と仲良くなって情報収集ができるような環境をつくっていきます。
ここかも!という候補が決まったら、とにかく直接現地に足を運んでください。ネットから得た情報だけで判断はできません。
「こんなに景色が開けてたんだ」「町の雰囲気ってこんな感じだったんだ」現地に行って五感で感じないことには本当のところはわかりません。
場所を決める上で一番大切なのは、そこは何度も行きたくなる場所か否かということです。
一時の感情で決めてしまうと、最初はしょちゅう行っていたけどそのうち足が遠のいてしまったいう状態になりかねません。
後述しますが、行った先で仕事をつくる、もしくはこんな仕事がしたいからこの場所といったアプローチをおすすめします。
探すところからがたのしみ
自分が気に入るところを見つけるまでには時間がかかります。場所探しって大変だ、時間と手間がかかると思うより、いろいろなところを見てまわること自体をたのしみましょう。
現に今まで知らなかったところを見るだけでも視野が広がって新しい発見があります。
大体目星がついたら、いきなりその場所を購入するということではなく、借りてみるという選択肢もあります。
体験サービスを利用する
自治体によってはプチ移住体験といったようなことをしているところもあります。数日の間実際滞在してみてその場所を知ることができます。
すると一度だけ下見をした時とは違う感覚を得ることができます。
最近では試してみるということができるようなサービスもあります。
例えば、ADDressは月額を支払えば、日本全国の登録された家を利用できるというものです。トライアルにはちょうどいいですね。
空き家を探す
空き家を探すというのも一手でしょう。最近の社会問題ですね。空き家バンクというものもあり、かなり整備されてきています。
役場に足を運んで担当の人と直接相談してめぼしい物件が出たら連絡をもらうやり方もあります。
とにかく足繁く現地に通い、その土地自体を知っていくこと。それが二拠点を始めた後にもおおいに役立ちます。
最終的に何で決めたらいいのか、それは感性です。「ここって自分に合ってるよね」と感性に響くのならまずそこで始めてみる。
ガチガチに考えるのではなく、まず動いてみるのが得策です。
自分で住処をつくってみる
空き家を手に入れて自分の手で直していくという路線もあります。いわゆるDIYですね。
DIYというと敷居が高く思えるかもしれませんが、実はそうでもありません。僕自身二拠点を始めるまでDIY的な事には全く関心がありませんでした。
でも部屋の中に棚を作ったり、一部手直しをしているとだんだん面白くなって、そのうち薪棚や倉庫を作るようになりました。
道具を買い揃えていくうちにハマってしまいました。余分なものも随分買いましたが笑。
そして今いる信州小諸では小さな家をつくっちゃうまでに至ります。
DIYは、趣味半分実益半分で取り組めるのでやってみる価値があります。
民泊を手掛ける手もあります。民泊は法改正があって取り組みしやすくなりました。自分たちが使わない時は貸し出して収益を得ることも可能です。
宿泊業となると設備も含め許認可のハードルが上がり少し難しくなりますが、民泊であればお手軽に始められます。
仕事をどうするか
住む場所もさることながら、一番問題になるのが仕事です。特に将来的に移住を視野に置くのであればなおさらです。
働くについては、二拠点生活をやっているうちに下地をつくっておくことをおすすめします。
もう一つのシゴトをつくる
サラリーマンであれば現業をやりつつ、近い将来へ向け助走していきます。サラリーマンをやってる傍でもう一つのシゴトをつくっていきましょう。
もうひとつのシゴトは誰かに雇われるというのではなく、自分の力で稼ぐものをつくるという意味です。
自分でシゴトをつくるにはそれなりの準備と時間を要します。なのでいち早く準備に入ることをおすすめします。
どうしよう、こうしようと思っている間に気が付いたら何年も過ぎていた。そんなことになります。
オンラインは当たり前
二拠点居住で現業をやろうと思ったらリモートワーク環境がないと難しくなります。
今の会社がリモートワークを導入していないのであれば、できる環境の会社に転職するという手もあります。
これからの時代、リモートワークができない会社に将来がありません。自分の生き方を変えていこうという思いがあるのなら、今ある会社にしがみつくという意識はリセットすることです。
「そんなこと、フリーランスじゃないとできないよ・・・」なんて言っているといつまでたっても状況は変わりません。
今に甘んじるのか、それともこれからの生き方を重要視するのか。目の前のことだけじゃなく、一つ上の視点に立ってみましょう。
この際、重要になるのがポータブルワークです。持ち運びができる状態にすることで場所がどこに移っても仕事ができます。
逆に時間や場所を固定化してしまうと融通が利かなくなります。自分の仕事はポータブルにする。二拠点生活で目指したい姿です。
ポータブルワークは僕自身これまで試行錯誤して築いたワークスタイル、おすすめします。
自分に合った働き方を選ぶ
フリーになろうとか起業するのがいいとか、そんなことを言っているのではありません。
完全に自由でやりたいのなら起業、会社に所属することで自分の力が発揮できる、その方が自分に合っているのなら会社員。人それぞれです。
自分に合った働き方を選ぶ。大切なのはまず自分がどうありたいかが軸足。それを実現するためにどういう手段をとって、どんな環境に身を置けばいいかということです。
一方、個人事業主や経営者にとって、二拠点生活は生産性を上げ、心の豊かさを得る格好の環境づくりです。
その時も新たな仕事はポータブルワークにする。そうすることによって可能性は無限大に広がっていきます。ぜひトライしてみましょう。
お金はどのくらいかかるの?
どのくらい費用が必要になるのかは気になるところですね。潤沢に資金があるのであれば何でもできるでしょう。
でもそんなケースは稀ですよね。ポイントは最初はお金をかけずにスタートすることです。
まずはお試し
まずはお試しでやってみるというのが入口としておすすめです。ネットで「移住体験」などと検索すれば移住体験住宅、移住体験ツアーなどたくさんの選択肢があることがわかります。
体験住宅の例で言えば、自治体提供が多いので費用はリーズナブル、滞在期間も数日から複数年に渡るものまでさまざまなメニューがあります。
自分が気になる地域でこうした支援がないかを調べてみてください。 以下のようなサービスもあります。
こうしたプロセスを経て、自分所有のものを得るというのがスムーズな方法です。期限を決めてやりたいといった場合は、資金をある程度用意した上で進めていきましょう。
その際、物件購入費用だけでなく、浄化槽や配管など老朽化しているがために補修もしくは入れ替えで費用がかさむものがあります。
僕の場合、購入した後に浄化槽の破損が発覚し、まとまったお金が必要になってしまいました。
物件をみるときは、建物だけでなく、こうした周辺インフラについての確認チェックを忘れないようにしてください。
二拠点居住で得られるメリット
二拠点居住を始めてこれは良かったということを挙げてみます。始める前は予想もしていなかったことがたくさん発見できました。
身も心も空っぽになれる
山のログハウスにいた頃。山に来ると空気がおいしい。真っ先に感じることです。空が近くて青い。青さを見ると清々しい気持ちになります。
深呼吸をすると、自分の中に溜まっていた老廃物が流されていく感じでした。
今のベースは森。緑あふれる木々、野鳥の声、抜けるような青空・・・ぼっーっと眺め、耳の傾けるだけで、それまでうだうだ考えていたことが消えていきます。
日常にはややこしいことがたくさん。それらを抱えたままでは前に進むことができなくなります。
デトックスとかリセットすると言いますね。まさに自然にそれができている感覚になれます。
頭の切り替えができる
「都会だとせせこましいし、ビルに囲まれ、人混みの中は疲れる。森に来るとリフレッシュされる、いやなことも忘れられる、ほっと安心できる、心がおおらかになる」
とは妻の言葉です。二拠点居住になって人が周囲の環境に大きく影響を受けるということを実感しました。
双方を比較できる
二拠点にいることで双方を比べることができます。当たり前のことかもしれませんが、山や森にいると自然が身近に感じられます。
町にいるときは気にしていないような季節の変化、木々の様子、草花の風景などが目に飛び込んできます。
町にも良いところがあることを再認識します。山や森から町に戻ると快適な生活空間が待っています。
お皿はすぐ洗える、お風呂はすぐたまる、テレビもみれる・・・いろいろです。日頃はそんなことを思うはずもないことにぜいたくを感じます。
在宅ワークを続けていると知らない間にパソコンの前で座ってばかりになりますよね。これも自宅に戻ってきたら実感することの一つです。
フィールドでは何かつけ身体を動かす仕事があります。町にいるとついついパソコンにかじりつきです。
そんなときは散歩に出ます。自分の足で歩く、見える景色を変えることでリフレッシュできます。
何気ないことのようですが、森仕事をしているからわかるようになった感覚を知っているので、同じ要素を取り入れようとしています。人は経験したことでないとイメージできませんよね?
仕事場であり遊びの場
僕の場合は仕事場として山や森の拠点を設けました。具体的には宿泊を受け入れたり、講座をやったりといった毎日を送り、これからは文字通り森の暮らしをサポートしていきます。
お客さまがいらしているときは仕事場として利用します。適度な緊張感もあります。
お客さまがいらっしゃらないときは、自分たちのリフレッシュの場所として使っています。これもやりながらわかったことですが、緊張感とリラックスがあってメリハリがついています。
遊んでいるときも「これってサービスに取り入れてみたらどうかな?」とアイデアが沸いてきたりします。いつもオンでありオフ、そんな感じで過ごしています。
五感が立って感性が呼び覚まされる
新緑の透き通る色や日の出をオレンジ色を目にする、風がそよぐ音を聴く、土や木を触ったときにぬくもり、薪の燃える匂い、とれたての野菜の甘い味・・・
これらは二拠点になって感じたものばかり。つまり五感です。
五感が立つと右脳が働くようになるとも言われます。都会で左脳的なことばかり考えていると息がつまるし、発想も凝り固まってしまいます。
人間本来の機能が戻ってくるような感覚と言えます。
生きている実感が得られる
山や森の生活では土の上を歩いています。いつもは気にも留めない花が目についたり、単なる草でしかなかったものが山菜だと知ったりします。
山菜は摘み取ったものをそのまま食べることができます。
山の暮らしの頃は、ご近所には無農薬の畑をやっている人がいました
「これ食べてみて。今の時期しかとれないから。おひたしとかでそのままいけるよ」ついこないだも大根の葉っぱを持ってきてくれました。
美味しさが際立っています。山の暮らしをして穫れたて野菜のぜいたくさを知るようになりました。
「去年は桜が咲くのが4月だったけど、今年は早いね」と季節の移ろいを感じることができます。
人間も大もとは動物です。動物の感覚があるから自然と共に生きている実感を得られるようになるのだと思います。
本質志向になる
あるものを使って何かに利用する、自分で手でつくってみる、無駄なものは買わない、必要なものだけに絞る・・・といった思考が働くようになりました。
思案するときもシンプルに考えたらどうなの?、その根っこは何なの?と自問自答するようになりました。
自然の大きさは人間の比ではありません。身近に自然を感じるだけで考え方まで変わっていくのだと思います。
二拠点居住のデメリット
結論から言うと、デメリットらしいデメリットはありません。
強いて挙げるとすれば、移動に時間がかかる、ガソリンなどの移動費用がかかる、光熱費が余分にかかる、税金がかかるといったことでしょうか。
でも場所を求める以上、こうしたものが発生するのは当然のことです。移動時間も視点を変えれば頭の中を整理する時間になります。
ガソリン代がかかる分、町中を移動する電車代はかからなくなります。光熱費も双方のバランスを考えれば無駄を省くことができます。固定資産税も地方であればさほど高額ではありません。
住居は上記しました通り、最初から購入せず、借りるといった方法からスタートしたら初期コストは抑えられます。
家財は二重にいるのではないかと思うかもしれません。
そうではなく、自宅にあるものを持っていく、そんなところから始めていきましょう。結構自宅には物があふれていますので、片付けにもなり一石二鳥です。
要は何を目的として二拠点居住をするのかを明確にすることでデメリットはなくなります。
まとめ
二拠点居住は目的ではなく手段です。大切なのは自分たちがどんなライフスタイル、生き方をつくっていきたいのかです。
それを実現するためのステップと考えてやってみることです。自律した生き方をつくるには絶好の環境づくりと言えます。大きく構えず、できることから始めてみましょう。