my forest,my home。自分の森で自分の家をつくる。
ど素人アラカン夫婦二人が一級建築士のサポートを受けながら、森の中の6坪ハウスをDIYするプロセスを工程ごとにまとめた記録です。
家づくりの最終ステップになる玄関ドア。最後の最後で最難関が来るとずっと思っていました。やっぱりその通り。でも何としてもクリアしないといけません。
いろいろと試行錯誤しながらフィニッシュまで至ったプロセスを記していきます。
形状を決める
ドア製作方法には、大きく框(かまち)ドア、フラッシュドアがあります。
框ドアとは、框と呼ばれる枠材で枠組みした扉です。框とは、引き戸や窓の枠をつくる材、床の高さが変わるところに入れる化粧材です。
フラッシュドアとは、芯材で骨組みをつくり、その両面に面材を貼って平らに仕上げたド扉です。
框ドアは施工の難易度が高く、今のスケジュールではきびしいので、フラッシュドア方式にしました。
今後、落ち着いてきたらぜひチャレンジしたいと思います。
デザインイメージをつくる
当初、外壁が唐松なので、ワンポイントで違う色合いという感じをイメージしました。そのうちそこまで主張しなくていいかも?と考えるように。
ドア枠が桧で白く囲むことになります。ドアそのものを変えなくてもこれがメリハリになるような気がしてきました。
思案のあげく、外は唐松、中は部屋の色合いに合わせ、杉か桧を使う方向で決めました。
次に板の張り方です。横張りをすると雨があたって目地に入って腐るデメリットがあります。雨が下へ垂れていくこともあり、外壁に合わせ縦張りにすることに。
丁番や取っ手をサッシと同じ黒色にすれば引き締まるのではないか。そんな感じでまとめました。
ちなみに自然に近く塗装するときは、キシラデコールという浸透させる材料、オスモやリボスといったオーガニック塗料があるそうです。
塗料を塗ると木が呼吸できなくなる。そんな思いがあるので極力塗らないようにというのが考えにあります。
どこから手をつける?
さあ製作です。といっても何から始めたいいか暗中模索状態。製材屋さんで材料の相談をすると、まず鍵からじゃyないの?とか。完成品を見た方がいいとも。
なるほど。完成品でイメージしないとゴールが見えません。とはいえ、どこかに行ってじっくりみる時間的余裕もありません。
頼みの綱はサポーター建築士。全体の流れをレクチャー受けることにしました。
詳しく解説してもらいますが、いつもながらそれなりの情報量。その場だけではオーバーフロー。あとはやりながらこの絵に立ち返ります。
玄関ドア材料を調達する
玄関ドアの材料には芯材と面材があります。芯材は骨組み、面材は文字通りドア面をつくる材です。
芯材は、クセの少ない杉や桧など。 厚さはシリンダー錠をつけるなら最低30ミリ、幅は45〜60ミリ程度とアドバイスがありました。
面材は外壁材をお願いした製材屋さんへ。信州長和町で唐松に特化した材をつくっているところ。サポーター建築士の計らいもあり、引き取りと同時に現地工場を見せてもらえることになりました。
現場大好き人間、とてもワクワクします。
現地へ着くといきなり皮をむいた材が積み上げてあります。
この機械で皮をむきます。タイヤで回すところが面白いですね。
挽かれた材は一つひとつの工程とともにベルトコンベアのように流れていきます。人手を最小限にしたオペレーションに驚かされます。
最終ステップでチップになり、製紙工場へ運搬されるとのこと。
切り屑は燃やして乾燥機に使われます。唐松一本すべてをむだなく循環。素晴らしいかぎり。
大きな作業は機械を使って人手をかけない仕組みづくり、最後の仕上げは職人さんが一枚一枚手入れをしていく。
扱いづらい唐松を仕組みと愛情で丁寧に加工、流通させていきたい。信州の木を世の中へ・・・熱い想いを感じ、ますます唐松が好きになりました。
4メートルの材を半分にカットしてもらって納品、フィールドまで運びます。こだわり材に心が弾みます。室外の面材は確保、あとは室内です。
室内側は桧か杉、カインズなどまわってもこれというものがありません。最終上田にあるホームセンターで入手できました。木材の小出し調達はほんと大変です。
翌日、唐松と桧の両方を並べてみます。桧は色がくすみ気味、何より透明塗装がしてあって自然な感じが減っています。
実際に現物をみると明らかに唐松の方がすばらしい。幸い4メートル材を半分に切ってもらっていたので量も足ります。
最終、両面とも唐松でいくことにしました。桧はこれからつくる小屋へ流用します。
芯材(骨組み)をつくる
いよいよ製作です。まずは枠組みになる芯材をつくっていきます。
材料はホームセンターで桧プレーナー材、幅88ミリ、厚さ20ミリ、長さ2メートルで一本500円ほどの掘り出し物が見つかりました。
幅を45ミリ程度なので半分に割いて使います。
外周サイズは、ドア枠との間に5ミリのスキマ(クリアランス)を設けます。
作業場所は平らなところがベスト。そうすると家の中しかありません。
四隅の直角と接合部分がはみ出さないの2点に重点を置いて慎重にビス止め。20ミリ幅の材なので普通のコーススレッドでは割れてしまう箇所も出てしまいます。
下穴をしっかり開けて、数年前に買って物置に眠っていた少し細めの造作用ビスを使ってみました。
鍵の取り付け位置をイメージして全体を眺めます。こんな感じかなあ?
鍵の穴掘りサイズ分プラスαで板を貼り付けます。
面材をつくる
続いて面材です。
厚さ20ミリのスタイロフォームをサンドイッチします。寒い地域、冬の防寒対策は抜け目なく。
フローリング作業以来の本実(さね)止め作業。精度を意識し緊張しながらもみ込んでいきます。
両面はり終わるとそれなりの重さになりました。この重さ、蝶番で支えられるの?心配になります。
そこそこで仕上がりました。やっぱりこだわり唐松にして良かった。
ドアの取っ手もフィールド赤松の端材を活用。赤松一本丸ごと生かすを目指します。
鍵を取り付ける
「シリンダー錠」「シリンダーサムターン錠」「本締り錠」・・・鍵といってもいろいろな種類があるみたい。複雑な構造は理解だけで時間が掛かります。取り付けがシンプルな本締り錠にしました。
色合いなどを吟味、楽天で手配。届いた部品をひと通り並べてみます。むむ、ムズイ・・・。
そもそもどう付くかすらわかっていません。実際にあててみてイメージをつくります。なるほど、こんな感じになるんだ・・・。
デッドボルトの穴開け
本締錠を付けるには、デッドボルトと呼ばれる錠を回すと突き出る部分とサムターンという錠を回す部分の2ヶ所に穴を開けないといけません。
まずデッドボルト。デッドボルトをはめ込む寸法はバックセットという名前で表記されています。バックセットとは錠ケースのフロント面からシリンダーやレバーハンドル(ノブ)の中心までの水平寸法の意味。
購入した錠のバックセットは60ミリ。余裕をみて21ミリの真っすぐな穴を10センチ近く開ける必要があることになります。
仕上がったドア本体への穴は一発勝負、失敗は許されません。真っすぐな穴あけを何度も練習。10回以上はやったでしょうか。
でも一度もうまくいきません。フリーハンドで感覚だけでやるのは至難の業。どうする?
YouTube先生のレクチャーによると簡易の治具を使っています。よし!これでやってみよう。とにかく実行あるのみです。
治具のおかげでかなり精度が上がりました。完璧とはいかないまでもそこそこの出来。ガイドをつくり本番にトライします。
恐る恐る開けることができました。ほっと胸をなでおろします。
欠き込んで何とか収まる。数時間かけての結果、燃え尽きました。
今回使った道具たち。いつもお世話さまです。
サムターンの穴開け
次にサムターン部分は36ミリの貫通穴です。こちらは道具選びに苦労しました。
36ミリくらいの大きさになると、普通のドリルビットではうまくいきません。かといって36ミリぴったりのものを買うとそれしか使えなくなりもったいないです。
いろいろ調べ、神沢パワーピットなるものに行き着きます。穴の大きさに合わせ調節ができるビットです。
いったん購入したものの、このままでは電動ドライバーの口に合わない構造。うーん、またしてもどうしたものか・・・さらに調べ倒してドリルチャックなるものが必要になることがわかります。
電動工具にカッターやドリルなどの先端工具を取り付けるためのアタッチメント。
時間に余裕があればネットで吟味したいところ。今日の明日で必要になるのでいつものカインズで置いてあるものを購入。とりあえず用を足しました。
作業に入る前にもう一度どう組み合わせるのかを確認。穴あけ位置を決めていきます。
1ミリの狂いが命取りになるのでは?慎重に墨をつけます。
片面の横から開けた穴とつながったところでビットが止まりました。中心がかみ合わないので周辺に残った削り端を彫刻刀で取り除きます。
反対側から墨付けしてサンドイッチで掘っていき何とか貫通。
サムターンを入れてかみ合わせるとカチッとデッドボルトが動きます。やった!何とか錠が納まりました。貫通穴はきれいに開かなくても入るみたい。やってみて初めてわかります。
ドア枠をつくる
材料は少し前に製材屋さんで切り出してもらった桧。そこそこの値段だったので失敗はNG。1ミリ狂うとずれが出る。直角にぶれないように。いつになく慎重にカットしました。
長きにわたり役割を果たしてくれた仮扉を外し、布とマスカーで虫の侵入を防ぎます。
枠を張る角には緊結金物があります。欠き込みしないといけません。材をあててもうまく採寸できない。そこで段ボールで型紙をつくる方法を思い付きました。これは結構イケます。
久しぶりの欠き込み。しばらくやらないとやり方を忘れてしまいますね。
まず上のドア枠を取り付けます。この下に両サイドの枠をつけることで上から流れ落ちる雨水の侵入を防ぐ組み方にします。
両サイドを付けていきます。ビス穴は後からダボで埋めることに。
欠き込みはそれなりに深くやらないとピタッとはまってくれません。鑿の手入れをしないとまずい。
上下左右のドア枠が付きました。唐松の外壁に桧の枠。いい感じの色合いです。
蝶番をつける
続いて蝶番です。後々のことを考え、ビスを抜かなくてもドアの取り外しができるものをチョイスします。
「抜き差し蝶番」「旗蝶番」「儀星(ぎぼし)蝶番」・・・これまたいろいろな種類があります。
蝶番の耐荷重はビスの本数で決まります。5~7本あった方がいいとのアドバイス。見合うものを探します。
ネットで取り寄せる時間がありません。幸いいつものカインズに儀星蝶番があり、ほっとひと息。
どういう向きで付くんだろう?本番前にシミュレーションしてみます。
それなりの重量。ネットで検索して上の方へ2つ、下へ1つ付けるのがいいみたい。蝶番の荷重は一番上にかかるため2つ目で負荷を軽減させるということのようです。
さあどう付ければいいのか?サポーター建築士に確認。芯材にビス止めがくるように合わせます。端合わせではないんですね。間違ってました。
再度、墨を付け直します。
欠き込んでいきます。彫刻刀と鑿で。端っこがはみ出さないようにあらかじめ切り込みを入れておきます。あとは丹念に、手間と時間の掛かる作業です。
ドア本体への蝶番付けが完了しました。
玄関ドア本体を取り付ける
さあ、ドア本体を取り付けていきます。
サポーター建築士、いつものイメージスケッチが役立ちます。
あちこちに転がっている端材を使ってシミュレーション。積み木レクチャーはわかりやすい!
実際はどのあたりにドア本体、ドア枠の蝶番はどこになるのか?図に書いてサポーター建築士にチェックしてもらいます。
再度寸法を計算すると上下をカットしないといけないことが判明。墨をつけて丸のこで作業を進めます。
するといきなり事件発生!丸のこの先に火花が飛び散るではないですか。何が起こったの??丸のこ不良??
停止して切り口を見ると、何とビスが出ているではないですか。そうか!面材を張るときに打ったビスのことを忘れていたのでした。
丸のこの刃とビスが干渉し火花を発していたことがわかりました。
このままでは作業が進みません。ビスをこじ開けて抜き取るしか方法はなし。
丸のこを使わず手のこで切り進めると斜めカットに・・・。あ゛ーーー。動揺したままの作業は厳禁です。
いつまでも落胆しているわけにはいきません。気を落ち着けて次のステップへ。ドア本体を再度はめ込んでみます。
蝶番を付けている側にズレがあります。
下部分はそこそこイケています。採寸し直し、部分調整していきます。
気を取り直し、サイドではみ出している部分をカットします。幸い丸のこは正常に動いてくれました。
結局その日はドア本体を取り付けるまでは至りませんでした。仮扉はドア枠が付いてビスが直接打てないため、思案を重ね、何とか復旧、帰路につきました。
翌日、取っ手をつくります。フィールド自生の赤松の端材を利用。毎日触るもの、愛情をもって作業。
ドア本体に付けてみます。なかなかいい感じ。
重いドアを抱えてドア枠に合わせてみるとギチギチです。ドア枠側の蝶番掘り込みをします。
ちなみに儀星蝶番なるものを使いました。軸を抜くと取り外しができるのですが、位置が直角でないと外れません。右往左往したのを思い出します。
蝶番を付けてドアを閉めると取っ手側があたります。あちゃ〜・・・ またまた試行錯誤のスタートです。
ドアを動かしてみます。すると、スーッと入っていくではありませんか!やった!遂にはまりました。思わずガッツポーズ。
ただ左上と下にズレがあります。何で?
とはいえ、まずはドア本体が収まった達成感に浸ります。ドアだけでなく、家全体のフィニッシュにもなるから。
あとは帰れるように鍵が掛かるようにしなければなりません。ズレが出ているので実寸では無理。暗やみの中、こうなるはずを採寸して穴掘り位置を決めます。またまた一発勝負。
どう掘るか調べる暇もありません。その場の判断で4ミリの錐ビットで何回も穴を開けて枠の中をつくっていきます。
冷や冷やしながらつまみを回すと、カチッと入りました!鍵が閉まります。やった!
終わる頃にはすっかり夜も更け・・・
室内に入ると見違えるような景色。やっぱり玄関があるとないでは家としての姿が大きく変わります。
玄関ドア反りの調整
一夜明けて玄関を眺めます。締まりました。やっぱり玄関は家の顔ですね。
ドアの左上と左下に反りが出ています。どうしたものか?別件で来てくれた建築士サポーターがアドバイスしてくれます。
玄関は一番反る箇所。外と内の温度、湿度差があるから。外は湿気が多く、うちは漆喰を塗っていることもあり湿気が少ない。その分内側に反っているのが今の状態。
対策として、湿気が少ない方へ水分を含ませる。濡れ雑巾で吹いてあげ、しばらく様子を見る。ドアを開けて日光の当たり具合を見ながら乾燥を調整する。反りの戻り具合を確認しながら何度かやっていると落ち着いてくる。
夏と冬、梅雨時期など年中通して起こる。特に松系は反りやすい。杉系は反りにくい。
なるほど、そういうことか。
木は生き物。これからも動いていく。そのことをわかった上で付き合っていく。これから長い関係になっていくのでしょう。
デッキができるまでの仮設階段づくり。チェンソー製材の赤松端材を利用します。いったんこれにて建物建築はピリオドを打ちました。
戸当たりをつける
最後の仕上げが戸当たり。スキマ防止と見栄えを整えます。
1センチ程度の材が必要です。どうやってつくるか?思案を重ねて、余っていた4センチほどの桧を割くことにしました。
何度かやり直しをしながらそこそこの出来栄えに。DIYはまさに自分でやって身につけていくしか道はありません。
戸当たりを付けるは箇所のビス穴はダボで埋めていきます。こうした細かな作業で時間が掛かります。でも今やっておかないと!
昼過ぎまでやっと蝶番側が終了。
さあ、一気に!と思ったら、反りがあるドアではうまく付けることができません。
唐松の板へ水を含ませながら少しずつ矯正。付き合いながら。残りの戸当たりはもうちょい先。
その後も水を含ませる反り調整を丹念に続けます。少しずつですがまっすぐに近づいています。
数日後、ここらで正規の位置へ戸当たりを付けてみようということに。鍵を閉めて強制的にまっすぐにしていきます。
まだ鍵はなかなか締まりづらいけど、このまま続けていると落ち着いてくるみたい。
この後、梅雨が来て木が膨張、ドアが閉まらない日々が続きました。結局、片面をカンナげ削ってやり直し。
何度も無理矢理閉めたので角が痛んでしまいました。木のドアは動きます。そのつもりでいてください。
まとめ
森のタイニーハウスセルフビルド、最終ステップ、最後の超難関でした。作業を終えた後に自宅マンションのドアを見るとお手本がありました。最初から見ておけばよかった!
重要なことは「最終形がどうなるかを知っておく」こと。そこから各部分の作り方を整理すること。人生初の経験ばかり。一度もできずじまいでしたが、意識したいですね。
とにもかくにも建物は完成。すったもんだばかりでしたがいよいよ住居がスタートします。